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土地家屋調査士過去問民法ランダム問題
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問題 次の対話は、建物に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対して、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■教授:借地上の建物に設定されていた抵当権が実行されて、買受人が建物の所有権を取得した場合、借地権はどうなりますか。
学生:借地権は建物の所有権とは別個の権利ですので、借地権は買受人に移転しません。
× 借地上の建物に設定されていた抵当権は、原則として建物の所有を目的として敷地の地上権や賃借権にも効力が及びます。建物に設定されていた抵当権は特段の理由がない限り、敷地の利用権にもその効力を及ぼすので切り離すことができない。(最判昭40.5.4)
よって建物の所有者が有している借地権は抵当権が実行されれば買受人に移転する
■教授:一棟の建物の一部について取得時効は成立しますか。
学生:一筆の土地の一部について取得時効の成立が認められるのと同様に、一棟の建物の一部についても、その部分が区分建物としての独立性を備えているか否かにかかわらず、取得時効の成立が認められます。
× 土地については一筆の土地の一部について時効取得を認めている(大判大13.10.7)が、建物について認められた判例は今までありません。しかし区分建物の独立性を備えていれば時効取得の成立が認められると考えられています。(民162)
■教授:建物の所有者が移築を目的として当該建物を解体した場合には、その建物に設定されていた抵当権はどうなりますか。
学生:解体された建物は不動産ではなくなりますから、当該建物に設定されていた抵当権は消滅することになります。
〇建物が滅失すると建物に設定されていた抵当権は消滅することになり、木材に及ばない。(大判大5.6.28、大判大6.1.22)
■教授:賃貸物件として使用されている建物に抵当権が設定された場合、抵当権者は、建物の賃料から優先弁済を受けることができますか。
学生:賃料債権も物上代位の対象になりますから、抵当権者は被担保債権の債務不履行後に、賃料債権に対する物上代位権を行使することによって賃料から優先弁済を受けることができます。
〇 判例では賃料債権も物上代位の対象となると判断されています。(最判平成元年.10.27)
■教授:物には不動産と動産とがありますが、建築中の建物は、どのように扱われますか。
学生:土地の定着物ですから不動産に当たりますが、基礎工事の段階では土地の一部と扱われるのに対し、屋根や壁ができて建物とみられる段階に至ると、土地とは別の不動産と扱われます。
〇 屋根や壁ができて建物とみられる段階に至ると、土地とは別の不動産と扱われます。(大判昭和10.10.1、建物認定3訂版19頁)
2006年(平成18年)民法
問題 任意代理に関して正誤を答えて下さい。
■同一の法律行為については本人があらかじめ許諾した場合であっても,当事者双方の代理人となることはできない。
× 同一の法律行為について、相手方の代理人として,又は当事者双方の代理人としてした行為は,代理権を有しない者がした行為とみなす。
ただし,①債務の履行
②本人があらかじめ許諾した行為
③その他本人の利益を害さないと認められる場合
は,この限りでない。(民108)
■復代理人の行為について,代理人は,本人に対して債務不履行の責任を負う。
〇 任意代理において,復代理が認められていれば復代理人の行為により本人に不利益が生じた場合は,代理人は本人に対して債務不履行の責任を負う。
■「任意代理人」による「復代理人の選任」
「委任による代理人」は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(民104)
■「法定代理人」による「復代理人の選任」
「法定代理人」は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは 、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。(民105)
■代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,相手方が,代理人が本人のためにすることを知っていたときは,本人に対して直接にその効力を生ずる。
〇 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。(民99.1)
これに対して、代理人が本人の為にすることを示さないでした意思表示は自己のためにしたとみなされる。(民100)
ただし相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたとき、意思表示は本人に対して直接効力が生じる。(民100ただし書き)
■未成年者を代理人に選任することはできない。
× 未成年者を代理人に選任することはできる。(民102)
■制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。(民102・代理人の行為能力)
■意思表示の効力が,ある事情を知っていたことによって影響を受けるべき場合には,その事実の有無は,代理人について決する。
〇 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。 (民101.1、代理行為の瑕疵)
民101条(代理行為の瑕疵)
■意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(民101.1)
■相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(民101.2)
■特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。 (民101.3)
2012年(平成24年)民法
問題 相続人がA及びBの 2 名存在する場合における相続に関する正誤を答えて下さい。
■相続人Aが単独で単純承認をした場合,相続人Bは,限定承認をすることができない。
〇 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。(民923)
■相続人Aは,限定承認をした場合には,以後,善良な管理者の注意をもって,相続財産の管理を継続しなければならない。
× 限定承認を選択した相続人Aは限定承認者となり,その固有財産におけるのと同一の注意をもって,相続財産の管理を継続しなければならない。(民926.1)
■相続人Aが相続の放棄をし,相続人Bは単純承認をしたが,相続財産たる表題登記のみがある不動産について,Aの債権者の申請により代位による所有権の保存の登記がされた後,Aの法定相続分に対する仮差押えの登記がされたときは,この仮差押えの登記は無効である。
〇 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。(民939、最判昭42.1.20)
これはAの債権者がいても同じであり、債権者が仮差押えをしてもこの登記は無効となる。
■相続人Aは,いったん相続の承認をしたが,自己のために相続の開始があったことを知った時から 3 か月以内であれば,その承認を撤回することができる
× 一度された相続の「承認と放棄」は,自己のために相続の開始があったことを知った時から 3 か月以内でも撤回することができない。(民919.1)
■相続人Aは,相続の放棄をするためには,相続の放棄について相続人Bの承諾を得る必要がある。
× 相続人の一人が相続を放棄する場合は他の相続人の承諾を得ることなく家庭裁判所に申述することができる。
2017年(平成29年)民法
問 題 物権的請求権に関して、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■ A及びBが甲土地を共有している場合において、無権利者Cが甲土地に産業廃棄物を不法投棄したときは、Aは、単独で、Cに対して当該産業廃棄物を撤去するよう請求することができる。
○ A及びBが甲土地を共有している場合において、無権利者Cが甲土地に産業廃棄物を不法投棄したときは、Aは、単独で、Cに対して当該産業廃棄物を撤去するよう請求することができる。
■共有物を第三者が占有している場合、各共有者は単独で第三者に対し共有物全部について明渡・引渡を請求することができる。(大判大正7年4月19日 理論明示なし)
■ Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、甲土地について、BからAへの所有権の移転の登記がされていないときは、Aは、甲土地を占有する無権利者Cに対して甲土地の明渡しを請求することができない。
× Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、甲土地について、BからAへの所有権の移転の登記がされていなくても、Aは、甲土地を占有する無権利者Cに対して甲土地の明渡しを請求することができる。
■ 物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(民177)
しかし、BからAへの所有権の移転の登記がされていなくてもAは無権利者に対しては土地の明渡しを請求することができる。
■ Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、AB間の売買契約上、甲土地の所有権の移転時期に関する特約がないときは、Aは、当該契約締結後直ちに、Bに対して所有権に基づき甲土地の引渡しを請求することができる。
○ Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、AB間の売買契約上、甲土地の所有権の移転時期に関する特約がないとき、Aは当該契約締結後直ちに、Bに対して所有権に基づき甲土地の引渡しを請求することができる。
■物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(民176)
■ 所有権が時効によって消滅することはないが、所有権に基づく返還請求権は時効によって消滅する。
× 所有権及び所有権に基づく返還請求権は時効によって消滅することはない。(大判大正5年6月23日 )
■ Aが甲土地を所有し、その旨の登記がされている場合において、無権利者Bが甲土地上に乙建物を建て、占有補助者であるCと共に居住しているときは、Cを建物から退去させるためには、Aは、Cに対し、乙建物から退去して甲土地を明け渡すことを請求しなければならない。
× Aが甲土地を所有し、その旨の登記がされている場合において、無権利者Bが甲土地上に乙建物を建て、占有補助者であるCと共に居住しているとき、Cを建物から退去させるためには、Aは、無権利者Bに対し乙建物から退去して甲土地を明け渡すことを請求することはできるが、占有補助者であるCに対し、乙建物から退去して甲土地を明け渡すことはできない。
2023年(令和5年)民法問2
問題 Aを被相続人とする代襲相続に関する次の記述のうち、正誤を答えて下さい。
■Aの死亡以前にAの実子Bが死亡していた場合には、Aの死亡時に胎児であり、その後生きて生まれたBの子Cは、Aの代襲相続人となる。
○ Aの死亡以前にAの実子Bが死亡していた場合には、Aの死亡時に胎児であり、その後生きて生まれたBの子Cは、Aの代襲相続人となる。
■ 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす(民886)が、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。(民886.2)
■ Aの死亡以前にAの配偶者Bが死亡していた場合であっても、Bとその元配偶者Cとの間の実子Dは、Aの代襲相続人とならない。
○ Aの死亡以前にAの配偶者Bが死亡していた場合であっても、Bとその元配偶者Cとの間の実子Dは、Aの代襲相続人とならない。(民887.2)
■被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。(民887.2)
■ Aに子がなく、かつ、Aの死亡以前にAの父B及び母Cが死亡していた場合において、Bの父Dが生存しているときは、Dは、Aの代襲相続人となる。
× Aに子がなく、かつ、Aの死亡以前にAの父B及び母Cが死亡していた場合において、Bの父Dが生存しているときでも、Dは、Aの代襲相続人とならない。
相続人が直系尊属の場合、代襲相続は生じない。(民889.1)
■ Aの死亡以前にAの実子Bが死亡していた場合であっても、Bの養子Cは、Aの代襲相続人とならない。
× Aの死亡以前にAの実子Bが死亡していた場合であっても、Bの養子Cは、Aの代襲相続人になる。
■被相続人の子は、相続人となる。(民887)
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。(民887.2)
■ Aの実子Bが廃除によってAの相続権を失った場合には、Bの実子Cは、Aの代襲相続人となる。
○ Aの実子Bが廃除によってAの相続権を失った場合には、Bの実子Cは、Aの代襲相続人となる。(民887.2)
2024年(令和6年)民法問3
問題 制限行為能力者に関する記述のうち、正誤を答えて下さい。
■ 被保佐人が第三者のために保証人となる場合には、保佐人の同意を得る必要はない。
× 被保佐人が第三者のために保証人となる場合には、保佐人の同意を得る必要がある。(民13.1.2)
■ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始の審判を取り消さなければならない。
○ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始の審判を取り消さなければならない。
(民19.1)
■ 時効の期間満了前6か月以内の間に成年被後見人に成年後見人がない場合には、その成年被後見人が行為能力者となった時又は成年後見人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その成年被後見人に対して、時効は完成しない。
○ 時効の期間満了前6か月以内の間に成年被後見人に成年後見人がない場合には、その成年被後見人が行為能力者となった時又は成年後見人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その成年被後見人に対して、時効は完成しない。(民158.1)
■ 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
○ 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。(民21)
■ 本人以外の者の請求により保佐開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
× 保佐開始の審判をすることができる場合とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。
しかし本人以外の者の請求により保佐開始の審判をするには、本人の同意がなければならないという規定はない。(民11)
2022年(令4年)民法問1
問題 時効の援用に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■甲土地上に乙建物を所有しているAから乙建物を貸借しているBが,甲土地の所有者であるCから,所有権に基づき乙建物から退去して甲土地を明け渡すよう求められた場合において,Aの占有による甲土地の所有権の取得時効が完成しているときは,Bは,その取得時効を援用してCからの請求を拒むことができる。
× 建物を貸借しているBは取得時効を援用することはできない。(最判昭和44.7.15)
■甲土地の所有権の取得時効が完成している時、建物を所有している者から建物を賃借している者は取得時効を援用することはできない。(最判昭和44.7.15)
■建物を所有している者から建物を賃借している者は直接利益を受けるものではないのでは取得時効を援用することはできない。
■Aに対する貸金債務を承認したBが,Aから貸金返還請求を受けた場合には,Bは,その承認の際に,その貸金債務について消滅時効が完成していることを知らなかったときであっても,貸金債務の消滅時効を援用してAからの請求を拒むことができない。
〇 Bは承認の際に,消滅時効が完成していることを知らなかったときであっても,貸金債務の消滅時効を援用してAからの請求を拒むことができない。(最判昭和45.5.21)
■時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。(民法152.1)
■債務者が消滅時効完成を知らなかったとしても消滅時効を援用することができない。(最判昭和41.4.20)
■AのBに対する売買代金債務を連帯保証したCは,Aの売買代金債務について消滅時効が完成した後にBから連帯保証債務の履行を求められた場合には,Aの売買代金債務についての消滅時効が完成する前に自らの連帯保証債務を承認していたときであっても,Aの売買代金債務についての消滅時効を援用してBからの請求を拒むことができる。
〇 消滅時効が完成する前に売買代金債務を連帯保証したCは,消滅時効が完成する前に自らの連帯保証債務を承認していたときであってもAのBに対する売買代金債務についての消滅時効を援用してBからの請求を拒むことができる。(大判大正4.7.13)
■主債務者と保証人とが連帯して債務を負担するとき(連帯保証)は、連帯債務者の1人について生じた事項の効力を規定した民438、民439.1、民440、民441条(履行の請求・更改・相殺・債務の免除・混同・時効の完成の絶対的効力、相対的効力のみを有する事項)が準用される。
つまり、負担部分のない連帯債務と同じ扱いとなる。(民458)
■被相続人Aの占有により甲土地の取得時効が完成していた場合には,Aの共同相続人の一人であるBは,甲土地の全部について取得時効を援用することができる。
× 共同相続人の一人は,自己が直接受ける相続分の利益の存する限度においてのみ取得時効を援用できる(最判平成13.7.10)
■Aを抵当権者として先順位の抵当権が設定されている不動産の後順位の抵当権者であるBは,Aの先順位の抵当権の被担保債権について消滅時効が完成した場合であっても,その消滅時効を援用することができない。
〇 後順位の抵当権者は,先順位の抵当権の被担保債権についてその消滅時効を援用することができない。(最判平成11.10.21)
■時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。(民145)
■債務の消滅時効援用についてその債務が消滅するので債務者、保証人、連帯保証人、物上保証人は援用をすることができる。(大判大4.7.13、大判昭7.6.21、最判昭43.9.26)
2011年(平成23年)民法
問題 不動産の取得時効に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■ Aから甲不動産を買い受けてその占有を取得したBが,売買契約当時,甲不動産の所有者はAではなくCであり,売買によって直ちにその所有権を取得するものでないことを知っていた場合には,Bは,その後,所有権の時効取得に必要とされる期間,甲不動産を継続して占有したとしても,甲不動産の所有権を時効取得することはできない。
× Aから甲不動産を買い受けてその占有を取得したBが,売買契約当時,甲不動産の所有者はAではなくCであり,売買によって直ちにその所有権を取得するものでないことを知っていた場合,Bは,その後,所有権の時効取得に必要とされる期間,甲不動産を継続して占有すれば,甲不動産の所有権を時効取得することができる。(法162.1,最判昭42.7.21)
■占有の開始時に悪意又は有過失であっても「20年間」所有の意思をもって、平穏に、 かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 (民法162.1)
■民法162条
20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。(民法162.1)
10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。(民法162.2)
■ Aが,甲不動産を10年間占有したことを理由として甲不動産の所有権の時効取得を主張する場合,その占有の開始の時に,Aが甲不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であったことは推定されない。
○ Aが,甲不動産を10年間占有したことを理由として甲不動産の所有権の時効取得を主張する場合,その占有の開始の時に,Aが甲不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であったことは推定されない。
■占有者の「善意」は、推定される。(法186.1)
■Aが甲不動産を自己の所有と信じたことにつき「無過失」であったことは推定されない。
■占有者は、所有の意思をもって、「善意」で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。(民法186)
■前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。(民法186.2)
■ 取得時効を援用する者が,時効期間の起算点を任意に選択し,時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることは許されない。
〇 取得時効を援用する者が,時効期間の起算点を任意に選択し,時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることは許されない(法144,最判昭35.7.27)
■時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算する必要がある。時効援用者が起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。(法144条、法162条、最判昭35.07.27)。
■甲不動産を所有の意思なく占有していたAが死亡し,Bがその占有を相続により承継した場合には,Bは,新たに甲不動産を事実上支配することによって占有を開始し,その占有に所有の意思があるとみられ,かつ,Bの占有開始後,所有権の時効取得に必要とされる期間その占有を継続したとしても,自己の占有のみを主張して甲不動産の所有権を時効取得することはできない。
× 甲不動産を所有の意思なく占有していたAが死亡し,Bがその占有を相続により承継した場合,Bは,新たに甲不動産を事実上支配することによって占有を開始し,その占有に所有の意思があるとみられ,かつ,Bの占有開始後,所有権の時効取得に必要とされる期間その占有を継続すれば,自己の占有のみを主張して甲不動産の所有権を時効取得することができる。(法185)(最判昭46.11.30)
■権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない(民法185条)
■不動産を占有する意思のない被相続人Aが死亡し,その相続人が「相続人が占有を承継」し「相続人が新たに相続財産を支配」し「相続人が占有に所有の意思があり」さえすれば,生前に不動産を占有する意思のない被相続人がいた場合でも,相続人が占有を始めたと見なされる。(最判昭46.11.30)
■甲不動産につき賃借権を有するAがその対抗要件を具備しない間に,甲不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合には,Aは,その後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,甲不動産を継続的に用益したとしても,抵当権の実行により甲不動産を買い受けた者に対し,賃借権の時効取得を対抗することはできない。
○ 抵当権設定登記後に賃借権を時効取得した者と買受人についての問題です。
「不動産につき賃借権を有する者」がその対抗要件を具備しない間に、当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合、「不動産につき賃借権を有する者」は、抵当権が設定されてその旨の登記がされた後、賃借権の時効取得に必要とされる期間、当該不動産を継続的に用益したとしても、競売または公売により当該不動産を買い受けた者に対し、賃借権を時効により取得したと主張して、これを対抗することはできない。(最判平23・1・(1)
■「不動産につき賃借権を有する者」は「抵当権が設定されてその旨の登記がされる前」に対抗要件を具備しなければ保護されないというのが判例の考え方なのです。
2020年(令和2年)民法
問題 次の対話は,相続に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次の学生の解答のうち,正誤を答えて下さい。
教授: これから,被相続人Zの相続人が子G及びHのみであり,甲不動産がZの遺産に属するという事例について検討しましょう。Gは,甲不動産について,遺産の分割の方法によらずに民法第 256 条第 1 項に規定する共有物の分割の請求をすることはできますか。
学生: はい。Gは,甲不動産について法定相続分に相当する共有持分を有しているので,民法第 256 条第 1 項に規定する共有物の分割の請求をすることができます。
× 民法第 256 条第 1 項に規定にある共有物の分割請求では各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。とし第 2 項では、前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができないとされている。
民法第 256 条第 1 項の共有物の分割請求は「一般的な共有の状態」のことで「物権共有」のことである。よって遺産を分割する方法とは異なることになる。
■遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。(民906)
教授: それでは,GとHとの間で甲不動産をGが単独で取得する旨の遺産分割協議が成立したにもかかわらず,Hが,その旨の登記がされる前に,甲不動産について法定相続分に相当する 2 分の 1 の共有持分を有しているとして,これをIに譲渡し,その旨の登記がされたとします。この場合において,Gは,Iに対して,甲不動産について自らの法定相続分を超える部分の所有権を承継したことを主張することができますか。
学生: いいえ。当該遺産分割協議に基づく所有権の移転の登記がされていませんので,Gは,Iに対して,自らの法定相続分を超える部分の所有権を承継したことを主張することができません。
○ GとHとの間で甲不動産をGが単独で取得する旨の遺産分割協議が成立したにもかかわらず、Hが、その旨の登記がされる前に、甲不動産について法定相続分に相当する 2 分の 1 の共有持分を有しているとして、これをIに譲渡し、その旨の登記がされたとします。その場合、Gは、Iに対して、甲不動産について自らの法定相続分を超える部分の所有権を承継したことを主張する場合、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない(民899 2.1)ので、
Gは,Iに対して,自らの法定相続分を超える部分の所有権を承継したことを主張することができない。
教授: では,Zが「遺産である甲不動産を相続人Gに相続させる。」との遺言をし,これがGに甲不動産を単独で相続させる旨の遺産分割の方法の指定と認められる場合には,甲不動産の所有権は,遺産分割の協議又は審判を経ることなく,Zの死亡の時に直ちに相続によりGに承継されますか。
学生: いいえ。遺産分割の協議又は審判を経ることなく,甲不動産の所有権がGに承継されることはありません。
(参考)
民法
第 256 条 各共有者は,いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし,五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 (略)
× Zが「遺産である甲不動産を相続人Gに相続させる。」との遺言をし,これがGに甲不動産を単独で相続させる旨の遺産分割の方法の指定と認められる場合には,甲不動産の所有権は,遺産分割の協議又は審判を経ることなく,Zの死亡の時に直ちに相続によりGに承継される。(最平3. 4 . 19)
教授: 法定相続分の算定について考えてみましょう。被相続人Xの相続人が配偶者Aと兄Bのみであるときは,Bの法定相続分はどうなりますか。
学生: Bの法定相続分は 4 分の 1 となります。
○ 被相続人Xの相続人が「配偶者Aと兄弟姉妹のBのみ」であるとき配偶者Aの相続分は4分の3となり、兄弟姉妹のBの相続分は、4分の1となる。(民900.3)
教授: 被相続人Yには配偶者Cとの婚姻中の子D及びEがおり,Dの子FがYの養子でもある場合において,Yの相続開始時にはCとDが既に死亡していたためにYの相続人がEとFのみとなるときは,Fの法定相続分はどうなりますか。
学生: Fは,Dの代襲者の資格とYの子の資格の双方で相続人となりますので,Fの法定相続分は 3 分の 2 となります。
○ 被相続人Yの配偶者Cと子Dが死亡しているので、子Eが2分の1、Dの子Fが2分の1の相続分を取得することになるが、Dの子Fは被相続人Y の養子にもなっているので、Dの子Fは 3 分の1を取得し、Dの子Fは 3 分の 2を取得することになる。 (民900.4、昭26.9.18民甲1881)
2021年(令和3年)民法第3問
問題 行為能力に関する正誤を答えて下さい。
■成年被後見人が日用品を買い受けた場合には, その売主が買主について後見が開始していることを知らなかったときであっても, 買主の成年後見人は, 当該日用品の売買契約を取り消すことができる。
× 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。(民9)
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。(民9ただし書き)
成年被後見人が日用品を買い受けた場合に,その売主が買主について後見が開始していることを知らなかったとき,買主の成年後見人は,日用品の売買契約を取り消すことができない。
■未成年後見人が選任されている未成年者については, 後見開始の審判をして成年後見人を付することができない。
× 未成年後見人が選任されている未成年者については, 後見開始の審判をして成年後見人を付することができる。
■成年後見は後見開始の審判があれば開始する。(民838.2)
■未成年後見人とは,未成年者(未成年被後見人)の法定代理人であり,未成年者の監護養育,財産管理,契約等の法律行為などを行う。親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に,家庭裁判所は,申立てにより,未成年後見人を選任します。
■家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。(民7)
■後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。(民8)
■本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには, 本人の同意が必要である。
〇 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。(民15.2)
■補助開始の審判を家庭裁判所に請求できるもの
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官(民11)
■補助開始の審判の取り消しを家庭裁判所に請求できるもの
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官(民14.1)
■被保佐人は, 保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たとしても, 自己の判断でその保証契約の締結をやめることができる。
〇 被保佐人は、原則、保佐人の同意を得なければならない。(民法13.1)ただし、自己の判断(被保佐人が単独)で正式な契約(不動産の売買契約等を含む)までに至っていない場合は、契約の締結をやめることができる(民法13.1ただし書き)
■被保佐人が保佐人の同意を要する重要な財産上の行為①~⑨
①元本を領収し、または利用すること
②借財または保証すること
③不動産その他の重要な財産の売買や交換すること
④贈与、和解、仲裁合意
⑤相続の承認、放棄、遺産の分割
⑥贈与の申込の拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の承諾、負担付遺贈の承認
⑦新築、改築、増築や大修繕
⑧5年を超える土地(山林を除く)の賃貸借、3年を超える建物の賃貸借
⑨その他
■被保佐人に十分な判断能力がある場合には, 被保佐人と契約を締結しようとする者は, 家庭裁判所に対し, 利害関係人として, 保佐開始の審判の取消しを請求することができる。
× 被保佐人と「契約を締結しようとするもの」は、保佐開始の審判の取り消しを家庭裁判所に請求することができない。
■保佐開始の審判を家庭裁判所に請求できるもの
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官(民14.1)
■保佐開始の審判の取り消しを家庭裁判所に請求できるもの
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官(民14.1)
■保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。(民12、保佐開始の審判)
2018年(平成30年)民法
問題 未成年者Aが親権者Bの同意を得ることなく,自己が所有する甲土地についてCとの間で売買契約を締結した場合(以下この売買契約を「本件売買契約」という。)に関し,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。なお, Aは,婚姻しておらず,また,甲土地に係る処分の許可及び営業の許可も,受けていないものとする。
■Cが甲土地を更にDに売却した場合には,Aは,Dに対して取消しの意思表示をしなければ,本件売買契約を取り消すことができない。
× Aは始めに法律行為をしたCに対して意思表示をしなければいけない。取り消しをする相手としてDは第三者なので、できない。(民123、大判大正14・3・3)
■未成年者が法定代理人の同意を得ずに法律行為をしても売買契約を取り消すことができる。(民5.1.2)
■行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人として した行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。(民120)
■Aは,成年に達する前であっても,Bの同意を得れば,本件売買契約を追認することができる。
〇 未成年者は法定代理人の同意を得て有効に追認をすることができる。 (民124.2.2)
■取り消すことができる行為の追認は、取り消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。(民124.1)
■次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。(民124.2)
※法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。(民124.2.1)
■未成年者でも法定代理人の同意を得て売買契約を追認することができる。 未成年者は成年に達しなければ追認することができないが、法定代理人の同意を得れば有効に追認することができる。(民124.2.2)
■Aは,成年に達した後,異議をとどめずに本件売買契約の代金をCから受領した場合には,本件売買契約を取り消すことができない。
〇 Aは,成年に達した後,異議をとどめずに本件売買契約の代金をCから受領した場合は,追認したとみなされ、本件売買契約を取り消すことができない。(民125.1)
■追認をすることができるとき以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる1~6の事実があったときは、追認をしたものとみなす。
ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。(民125)
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
■Aが成年に達する前にCがBに対して1か月以内に本件売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合において,Bがその期間内に確答を発しないときは,本件売買契約を追認したものとみなされる。
〇 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が1か月以内に確答を発しないとき、売買契約を追認したものとみなされる。(民20.2)
■Aが成年者であることを信じさせるため詐術を用いた場合には,Aが未成年者であることをCが知っていたときであっても,Aは,本件売買契約を取り消すことができない。
× 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。(民21)
しかし、Aが成年者であることを信じさせるため詐術を用いた場合に,CはAが未成年者であることを知っていたとき,Aは,本件売買契約を取り消すことができる。(大判昭2.5.24)
2013年(平成25年)民法
問題 Aは、Bから、B所有の甲土地を売却することについての代理権の授与を受け、Cとの間で、甲土地を1億円で売り渡す旨の売買契約(以下「本件契約」という。)を締結した。この場合に関して判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■Aが、Bから授与された代理権が消滅した後に、Bの代理人として本件契約を締結した場合、Bは、Cが代理権の消滅を過失なく知らなかったとしても、Cからの本件契約の履行請求を拒絶することができる。
× 本人BはCから契約の履行請求を拒絶することができない。 過去に存在した代理権が消滅した後に、代理人として代理行為をしているので、代理権消滅後の表見代理が成立する。(民112)
そして第三者が善意無過失であれば本人は責任を負わなければいけない。 原則で代理権を有しない場合、無権代理であって代理行為の効果は本人に帰属しない。
ただし、本人がその後、追認したり、表見代理が成立すれば、例外的に本人にその効果が帰属する。(民1116、民109、民110、民112)
表見代理が成立するためには①~③の全てを満たさなければいけない。
①本人Bが代理人Aに与えた代理権が消滅している
②代理人Aがした行為が代理権の範囲内の行為であった
③相手方Cが過失を知らなかったという、善意無過失であること
■Cが、Bから虚偽の事実を告げられたために、実際には3.000万円足らずの甲土地の地価を1億円は下らないと誤信して本件契約を締結した場合、Cは、Bの代理人として本件契約を締結したAがBの欺罔行為を過失なく知らなかったとしても、本件契約を取り消すことができる。
〇 Cは、欺罔行為を過失なく知らなかったとしても、本件契約を取り消すことができる。(民96.2)
代理人AがBの詐欺を知っていたか、知らなかったに関係なくCは本件契約を取り消すことができる。
■Aが、Bの代理人であることを示さずに、B本人であると名乗って本件契約を締結した場合、AをB本人であると過失なく信じたCは、本件契約を取り消すことができる。
× Aが、Bの代理人であることを示さずに、B本人であると名乗って本件契約を締結した場合、AをB本人であると過失なく信じたCは、本件契約を取り消すことができない。
代理人が自分の名前を示さずに、本人の名前だけを名乗り代理権の範囲内のことをした場合、有効な代理行為とみなされるので、本人に効果が帰属する。(大判大正9.4.27、大判大正9.6.25)
■Aが甲土地の代金を着服する意図を持ってBの代理人として本件契約を締結し、その代金を自ら消費した場合、Bは、CがAの意図を本件契約締結時に過失なく知らなかったとしても、Cに対し、本件契約の無効を主張することができる。
× Aの背信的な意図をCが全く知らないとしても契約は成立しているのでBは本件契約の無効を主張することはできない。(民99.1)
ただし、相手方が代理人に背任的・濫用の意図があることを知り又は注意すれば知ることができるような場合は、本人を保護しなければいけないので、本人は責任を負わない。(最判昭和42.4.20)
■Bの代理人として本件契約を締結したAが未成年者であった場合、Bは、代理権を授与した時にAが未成年であったことを知らなかったときは、本件契約を取り消すことができる。
× 代理人は、行為能力者であることを要しない。(民102)Aが未成年者であるということを知らなくても契約を取り消すことはできない。
2006年(平成18年)民法
問題 次の対話は、物権に関する教授と学生との間の対話である。教授の質問に対する学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■教授:では、土地の賃借人がその土地に木を植えたり、作物を作ったりした場合には、それらの物の所有権は、だれに帰属しますか。
学生:賃借人が賃借権に基づいて木や作物を土地に付属させた場合には、それらの物の所有権は、その土地の所有権には含まれず、賃借人に帰属します。
〇 賃借権に基づいて木や作物を土地に付属させた場合には、それらの物の所有権は、その土地の所有権には含まれず、賃借人に帰属します。ただし、賃借権に基づかない場合は土地所有者に帰属します。
■教授:「物」のうち、土地及びその定着物は不動産とされていますが、土地の定着物は、その土地の所有権と、どのような関係にありますか。
学生:土地の定着物は、原則として、その土地の一部を構成し、土地所有権に含まれますが、建物は、土地とは独立した所有権の客体となり、立木も、立木に関する法律による登記又は明記方法を備えることにより、独立した物として扱われます。
〇 土地とは独立した所有権の客体となり、立木も、立木に関する法律による登記又は明記方法を備えることにより、独立した物として扱われます。(大判大正8.10.9)
■教授:物権の客体である「物」とは、何ですか。
学生:「物」の定義は、民法に定められており、有体物をいうとされています。この有体物とは、空間の一部を占める外界の物質、すなわち、固体、液体及び気体のすべてを意味します。
〇 「物」の定義は、有体物をいうとされ、固体、液体及び気体のすべてを意味します。(民85)
■教授:「物」が物権の客体となるための要件として、何がありますか。
学生:物権の客体となる「物」は、特定していなければなりません。また、物権の客体は、単一の物でなければならず、物の集合に対して1個の物権が成立することはありません。
× 物権の客体は、単一の物と集合の物に対しても物権が成立する
■教授:物権としては、どのような種類の権利が認められていますか。
学生:占有権、所有権、抵当権、採石権等の民法の明文で認められている物権のほか,仮登記担保契約に関する権利等の特別法で認められた物権、さらには、上土権(地表のみの所有権)のように判例によって認められた慣習法上の物権などがあります。
× 採石権は民法ではなく「特別法により認められた物権」(採石法4)民法で認められている物権は10個ある。
所有権、地役権、地上権、先取特権、質権、抵当権(根抵当権を含む)、入会権、永小作権、占有権、留置権
上土権(地表のみの所有権)は物権として認められない。(大判大正6.2.10)
上土権とは江戸時代に徳川 家康が他人が所有している土地を第三者が開墾すれば第三者の開墾者が表土(土地の最上層)を所有することができる権利のことを言う。
2004年(平成16年)民法
問題 占有権に関する次の記述のうち,正誤を答えて下さい。
■ 甲土地を占有していたAからその占有を承継したBは,自己の占有にAの占有を併せて主張することはできるが,自己の占有のみを主張することはできない。
× 甲土地を占有していたAからその占有を承継したBは,自己の占有のみを主張することができ、さらに自己の占有にAの占有を併せて主張することもできる。(民187.1)
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。(民187.1)
前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。(民187.2)
■ 甲土地の占有者であるAから占有の訴えを提起されたBは,その訴えに対する防御方法として,甲土地の所有権が自らにあることを主張することができる。
× 甲土地の占有者であるAから占有の訴えを提起されたBは,その訴えに対する防御方法として,甲土地の所有権が自らにあることを主張することができない。(民202.2)
■ 代理人が自己の占有物について以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これにより占有権を取得する。
○ 代理人が自己の占有物について以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これにより占有権を取得する。(民181)
■ 他人のために占有をする者であっても,その占有を奪われたときは,占有回収の訴えを提起することができる。
○ 「占有者がその占有を奪われたとき」及び「他人のために占有をする者」であっても、その占有を奪われたときは、占有回収の訴えを提起することができ、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。(民197、民200.1)
■ 占有者が占有物の所持を失った場合には,その占有者は,占有回収の訴えを提起して勝訴し,現実にその占有物の占有を回復したとしても,その占有物の所持を失っていた間の占有の継続を主張することはできない。
× 占有権は占有者が占有物の所持を失った場合に消滅するが、占有者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実にその占有物の占有を回復すれば占有権は消滅しなかったものとされる。
(民203、最判昭和44.12. 2 )
2021年(令和3年)民法第2問
問題 A,B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■Aが,B及びCの承諾を得ることなく,単独で甲土地全部を占有している場合であっても.B及びCは,その共有持分が過半数を超えることを理由として,Aに対して当然には甲土地の明渡しを請求することはできない。
〇 A,B,Cが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合,AがB及びCの承諾を得ることなく,単独で甲土地全部を占有している場合でも,B及びCは,Aに対して当然には甲土地の明渡しを請求することはできない。(最判昭和41.5.19)
B及びCがAに甲土地の明渡しを請求したいのであれば甲土地をB,Cが使用するという旨の書面を作成すればよい。
■第三者Eが甲土地を不法に占有したことによりA,B及びCの使用が妨げられた場合であっても,Aは,Eに対してその持分割合を超えて損害賠償を請求することはできない。
〇 第三者Eが甲土地を不法に占有したことによりA,B及びCの使用が妨げられた場合であっても,Aは,自分の持分割合を超えて損害賠償を請求することはできない。(最判昭和51.9.7)
■甲土地の分割が裁判所に請求された場合において,甲土地を現物で分割することが不可能であるか,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,甲土地を競売に付し,その売得金をA,B及びCの各持分割合に応じて分割することを命ずることができる。
〇 共有物の分割について共有者間の協議が調わない場合や、協議をすることができない場合は、裁判所に分割を請求することができる。(民258.1)
裁判所は、
①現物を分割する方法
②共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分を取得させる方法により
共有物の分割を命ずることができるが、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。(民258.2、258.3)
共有物が相続財産の場合の分割方法
■ 共有物の全部またはその持分が相続財産に属する場合は、例外的な取扱いとなる。
■ 共有物が相続財産に属する場合は、裁判所に対して共有物の分割を請求することはできず、家庭裁判所に共有物の分割(遺産分割)をする。(民258.2.1)
ただし、共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、258条により裁判所に対して(家裁ではできない)共有物の分割を請求することができる。(民258.2.2)
■Bの持分についてのみ第三者Dへの不実の持分移転登記がされている場合には,A又はCは,それぞれ単独でDに対してその持分移転登記の抹消登記手続を請求することはできない。
× Bの持分についてのみ第三者Dへの不実の持分移転登記がされているのでA又はCは,それぞれ単独でDに対してその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。(最判平成15.7.11)
■A,B及びCが共同して甲土地をDに貸貸している場合において,その賃貸借契約を解除するときは,Aは,B及びCの了解がなくても,単独でDに対して解除権を行使することができる。
× 賃貸借契約の解除(共有物の管理行為)に関する事項は、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決する。(民252)
Aは3分の1の持分しかないので単独で賃貸借契約を解除することはできない。
2011年(平成23年)民法
問題 A,B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合において,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■第三者Dが違法に甲土地を占有している場合には,Aは,Dに対して,B及びCに生じた損害についての賠償を請求することができない。
○ 第三者Dが違法に甲土地を占有している場合には,Aは,Dに対して,B及びCに生じた損害についての賠償を請求することはできない。
Aは自己の持分についてのみ損害賠償を請求することができる。
■共有不動産の場合、各共有者は不法占拠者に対して自分の持っている持分割合についてしか、損害賠償を請求することはできない。(最判昭41. 3 . 3)
■故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民709)
■第三者Dが違法に甲土地を占有している場合には,Aは,B及びCの同意を得なくても,Dに対して,甲土地の明渡しを請求することができる。
○ 第三者Dが違法に甲土地を占有している場合には,Aは,B及びCの同意を得なくても,不法占拠者Dに対して,甲土地の明渡しを請求することができる。不法占拠者Dに対する返還要求は、他の共有者B及びCの同意を得なくても、Aが単独ですることができる。(民252)
■甲土地について,無権利者であるDが単独で所有する旨の不実の登記をした場合には,Aは,B及びCの同意を得ない限り,Dに対して,その登記の抹消を請求することはできない。
× 既登記の甲土地をA、B、Cが各3分の1の持分で共有している場合において、甲土地について,無権利者であるDが単独で所有する旨の不実の登記をした場合,Aは、B及びCの同意を得なくても単独で,Dに対して、その登記の抹消を請求することができる。
共有物の保存行為は各共有者が単独ですることができる。
共有とは、1個の物を複数人で共同所有することをいいます。
共有物の保存・管理・変更について
■保存行為とは「共有物の現状を維持する行為」
共有物の現状を維持するための①~④の行為は、他の共有者の同意を得なくても、各共有者が単独ですることができる。(民252)
保存行為とみなされるもの
①共有物の補修・修繕
②共有物の侵害に対しての妨害排除請求
③所有権保存登記
④不法占拠者に対しての返還要求
■管理行為とは変更に至らない程度の「使用方法の協議」「利用行為」
「改良行為」のこと
各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができる。(民249条)
A,B,Cが共有する建物を第三者Eに賃貸する場合の賃貸借契約の締結や、その契約を解除することは管理行為になります。
(最高裁判例昭和39.2.25)
契約の締結や解除をする場合は各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決定する。(民252)
「改良行為」とは建物に造作工事をしたり、宅地を地ならし(整地)したりすること
■変更行為とは、「物理的に性質・形状を変える行為」と「法律的な処分にあたる担保を設定したり、共有物自体を売却する行為」のこと。
各共有者は,他の共有者全員の同意がなければ,共有物に変更を加えることができません。(民251)
■A,B及びCが共同して甲土地をDに賃貸している場合において,Dに債務不履行があるときは,Aは、B及びCの同意を得なくても,当該賃貸借契約を解除することができる。
× 共有物の管理は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。(民252)
A, B及びCが共同して甲土地をDに賃貸している場合において,Dに債務不履行があるときは, Aは持分が3分の1しかなく過半数に達していないので単独で賃貸借契約を解除することはできない。(民252)
A,B,Cが共有する建物を第三者Eに賃貸する場合の賃貸借契約の締結や、その契約を解除することは管理行為になります。(最判例昭39.2.25)
契約の締結や解除をすることは管理行為になり,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決定する。(民252)
■AがB及びCに無断で甲土地に変更を加える行為をしている場合において,Bは,Cの同意を得ていないときは,Aに対して,当該行為の禁止を求めることはできない。
× 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。(民251)
変更行為とは、「物理的に性質・形状を変える行為」と「法律的な処分にあたる担保を設定したり、共有物自体を売却する行為」のこと。
AがB及びCに無断で甲土地に変更を加える行為をしている場合において,Bは,Cの同意を得なくても,Aに対して,当該行為の禁止を求めることができる。
共有物に変更を加える行為(改変・損傷)がされている場合、共有者は 他の共有者の同意を得ることなく当該行為の禁止を求めることができる (最判平10.3.24)。
仮に変更を加える行為が完了している場合,共有者は これを原状に回復するように求めることができる。
(注)この問題は,変更を加える行為がされている場合,共有者は 他の共有者の同意を得ることなく当該行為の禁止を求めることができる。 というもので,これに対して変更行為をする場合,各共有者は,他の共有者全員の同意がなければ,共有物に変更を加えることができない(民251)ので,この違いを確実に覚えることです。
各共有者は,他の共有者全員の同意がなければ,共有物に変更を加えることができません。(民251)
2019年(令和元年)民法
問題 付合に関する判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て当該建物を増築した場合であっても, その増築部分が取引上の独立性を有しないときは, 当該賃借人は, 当該増築部分の所有権を取得しない。
〇 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て当該建物を増築した場合でも,その増築部分が取引上の独立性を有しないとき,賃借人は,増築部分の所有権を取得することはできない。(民242、最判昭38.5.31)
■不動産の付合によって付合した物の所有権を喪失し, 損失を受けた者は, 当該不動産の付合によって所有権を取得した者に対し, その償金を請求することができる。
〇 不動産の付合によって付合した物の所有権を喪失し,損失を受けた者は,当該不動産の付合によって所有権を取得した者に対し規定に従い,その償金を請求することができる(民248)
■土地を使用する権原を有しない者が当該土地に小麦の種をまき, これを育てた場合には, 成育した小麦の所有権は, 種をまいた者に帰属する。
× 土地を使用する権原を有する者が当該土地に小麦の種をまいただけでは所有権が帰属しないが、小麦の種をまき,芽が出て苗が育ち収穫できる程度になれば、土地を使用する権原を有する者に所有権が帰属する。(大判昭和2.6.14)
土地を使用する権原を有しない者が当該土地に小麦の種をまき,芽が出て苗が育ち収穫できる程度に成長しても、小麦はその土地に符合するので所有権は,土地の所有者に帰属し、小麦の種をまいた権原を有しない者には帰属しない(民242、大判昭和31.6.19)
■Aが所有する甲動産に甲動産の賃借人Bが所有する乙動産が付合したときは, 甲動産が主たる動産であったとしても, Bは, 乙動産の所有権を失わない。
×Aが所有する甲動産に甲動産の賃借人Bが所有する乙動産が付合したとき,甲動産が主たる動産であったとすれば,Bは,乙動産の所有権を失う(民243前段)。
所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。(民243前段)
■BがAからAの所有する土地を買い受けて立木を植栽した後に, Cが当該立木とともに当該土地をAから買い受けてその所有権の移転の登記を備えた場合には, Bは, 当該立木につき対抗要件を備えていなく とも, Cに対し, 当該立木の所有権を主張することができる。
× BがAからAの所有する土地を買い受けて立木を植栽した後に,Cが当該立木とともに当該土地をAから買い受けてその所有権の移転の登記を備えた場合,Bは,当該立木につき対抗要件を備えなければ,Cに対し,当該立木の所有権を主張することができない(最判昭34.8.7、最判昭35.3.1)
2018年(平成30年)民法
問題 物権的請求権に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■所有者は,その所有物について権原を有しない者から賃借して占有する者だけでなく,当該所有物を賃貸した者に対しても,所有権に基づく返還請求権を行使することができる。
〇 所有者は所有物を賃貸した者に対しても,所有権に基づく返還請求権を行使することができる。(大判昭和13.1.28)
■所有権に基づく物権的請求権は, 10年の消滅時効により消滅する。
× 所有権に基づく物権的請求権に時効はなく消滅することはない。(大判大5.6.23)
■所有権に基づく妨害排除請求権を行使するには,妨害状態が発生したことについて相手方に故意又は過失がなければならない。
× 妨害、妨害のおそれ状態が発生してもしなくても、故意であるか、過失であるかに関係なく妨害排除請求権を行使できる。(民法1第4番総則物件総論)
■所有者は,その所有権の取得について対抗要件を備えていなくても,その所有物を不法に占有する者に対して,所有権に基づく返還請求権を行使することができる。
〇 所有者は,所有権の取得について対抗要件を備えていなくても,その所有物を不法に占有する者(不法占拠者)に対して,登記なくして対抗できる(最判昭和25.12.19)
■占有者が所有者に対して提起した占有の訴えに対して,所有者は,その所有権に基づく反訴を提起することができる。
〇 占有者が所有者に対して提起した占有の訴えに対して,所有者は,その所有権に基づく反訴を提起することを禁じないとしているので(最判昭和40.3.4)所有者は、所有権に基づく反訴を提起することができる。
2014年(平成26年)民法
問題 次の対話は,権利能力なき社団に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■教授:権利能力なき社団において,規約で定められていた改正手続に従い,総会における多数決により,構成員の資格要件を変更する旨の規約の改正が決議された場合,当該決議について承諾をしていない構成員に対して,当該決議により改正された規約は適用されますか。
学生:権利能力なき社団の構成員の資格要件の変更については,構成員各自の承諾を得る必要があり,構成員の資格要件を変更する旨の規約の改正が総会における多数決により決議された場合であっても,当該決議について承諾をしていない構成員に対しては,改正後の規約は適用されません。
× 権利能力なき社団において、構成員の資格に関する規約の規定が改正された場合には、 改正規定は、特段の事情のない限り、改正決議に承諾していない構成員も含めすべての構成員に適用される権利能力なき社団の総会で多数決によって構成員の資格要件を定める規約を改正した場合,特段の事情がない限り,決議について承諾をしていない構成員(改正に反対した構成員)にも効力が及ぶ。(最判平12・10・20)
■教授:それでは,権利能力なき社団である入会団体において,共有の性質を有する入会権の処分について,入会団体の構成員全員の同意を要件とすることなく,入会団体の役員会の全員一致の決議に委ねる旨の慣習が存在する場合,この慣習に基づいてされた入会権の処分は効力を有しますか。
学生:共有の性質を有する入会権については,各地方の慣習よりも民法の規定が優先的に適用されますから,この慣習に基づいてされた処分は,共有物の処分に関する民法の規律に反するものとして,効力を有しません。
× 入会権(いりあいけん)とは、村落共同体等が、主として山林原野において土地を総有などし伐木・採草・キノコ狩りや堆肥・家畜飼料・燃料等に用いる牧草や木の採取等の共同利用を行い収益をすることできる慣習的な物権のこと。
①入会権については,常に慣習が優先されるので,民法の規定が優先的に適用されることはない。(民263)
②入会権の処分の効力は各個人として持分権を有しないので民法の規律に反しない。そして各個人として処分することや分割請求権も認められていない。(大判大9・6・22)
民法は入会権を「共有の性質を有する入会権(民263)」と「共有の性質を有しない入会権(民264)」とに分けている。
■教授:権利能力なき社団Aの代表者であるBが,Aを代表して,Cとの間で,Aの活動に充てるための資金として100万円を借り受ける金銭消費貸借契約を締結しました。この場合において,Bを含むAの構成員各自は,Cに対して,当該金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務を負いますか。
学生:権利能力なき社団の取引上の債務は,その社団の構成員全員に帰属することになるので,Bを含むAの構成員各自は,Cに対して,直接の貸金返還債務を負います。
× 最高裁は権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は,その社団の構成員全員に,一個の義務として総有的に帰属するとともに社団の総有財産だけが,その責任財産となり,構成員各自は,取引の相手方に対し,直接には個人的債務ないし責任を負わないと解するのが相当であるとして上告を棄却した。(最判昭48・10・9)
■教授:ある団体が法人格を有しない社団すなわち権利能力なき社団であると認められるためには,どのような要件を満たす必要がありますか。
学生:団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体として主要な点が確定しているものであることが必要です。
〇 権利能力なき社団とは、社団としての実体(実質)を備えているが法人格は有しておらず,法人登記をしていない権利能力のない団体のことです。
判例による権利能力なき社団として認められるためには、①~④の要件を満たさなければいけません。(最昭39・10・15)
①団体としての組織性を有しているか
②多数決の原則により運営がなされているか
③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するか
④その組織についての代表の方法総会の運営、財産管理その団体としての主要な点が確定しているか
■教授:権利能力なき社団Aの資産である不動産について,これを登記するためにはどのような方法がありますか。
学生:A名義で登記をすることはできませんが,Aの構成員全員による共有名義で登記をすることや,Aの代表者であるBの個人名義で登記をすることは可能です。
〇 社団A名義で登記をすることはできませんが,Aの構成員全員による共有名義で登記をすることやAの代表者であるBの個人名義で登記をすることは可能です。(昭和23・6・21民三1879,昭和28・12・24民甲2523)。
2020年(令和2年)民法
問題 Aがその所有する甲土地をBに売却した場合に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■ Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、Aが死亡し、Aの唯一の相続人である子Cが甲土地を相続した場合には、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Cに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
○ Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、Aが死亡し、Aの唯一の相続人である子Cが甲土地を相続した場合には、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Cに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。(民896)
Aの相続人である子Cは第三者に該当しない。
■ Bが甲土地を更にCに売却した場合には、Cは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
○ Bが甲土地を更にCに売却した場合には、Cは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。(最判昭43.11.19)
■ Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、更に甲土地をCに売却した場合において、AC間の売買の時点で、AB間の売買についてCが悪意であったときは、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Cに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
× 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(民177)
Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、更に甲土地をCに売却した場合において、AC間の売買の時点で、AB間の売買についてCが悪意であったときは、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなければ、Cに対し甲土地の所有権の取得を対抗することができない。(最判昭32.9.19)
■ Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなければ、甲土地を無権原で占有するCに対し、甲土地の明渡しを請求することができない。
× Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えていなくても、甲土地を無権原で占有するCに対し、甲土地の明渡しを請求することができる。(最判昭25.12.19)
■ Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、Cのために抵当権を設定した場合には、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなくても、Cの抵当権が実行されて買受人となったDに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
× Aが甲土地をBに売却した後、その旨の登記がされない間に、Cのために抵当権を設定した場合には、Bは、甲土地について所有権の移転の登記を備えなければ、Cの抵当権が実行されて買受人となったDに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
2024年(令和6年)民法問2
問題 Aは,BからB所有の甲不動産を売却する代理権を与えられていないにもかかわらず,その事情について善意無過失のCとの間で,Bの代理人として甲不動産を1000万円で売却する旨の売買契約を締結し,Cから売買代金1000万円を受け取った。この事例に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■CがBに対し甲不動産の引渡しを求めたところ,BがAの無権代理行為の追認を拒絶した後,Bが死亡してその地位をAが単独で相続した場合には,Aは,Cから当該売買契約に基づく甲不動産の引渡請求をされても,Bの上記追認拒絶の効果を主張してCの請求を拒むことができない。
× 死亡した無権代理人Aが無権代理行為の追認を拒絶していれば、相続した無権代理人も追認拒絶することができる。(民113.1、最判平10.7.17)
■CがBに対し甲不動産の引渡しを求めたところ,Bが死亡してその地位をAが単独で相続した場合には,Aは,Cから当該売買契約に基づく甲不動産の引渡請求をされたときは,無権代理行為の追認を拒絶してCの請求を拒むことができない。
〇 死亡したBが追認していないので、AはCの請求を拒むことができない。(最判昭40.6.18)
■CがBに対し甲不動産の引渡しを求めたところ,Aが死亡してその地位をB及びAB間の子Dが共同で相続した後,Bが死亡してその地位をDが単独で相続した場合には,Dは,Cから当該売買契約に基づく甲不動産の引渡請求をされたときは,無権代理行為の追認を拒絶してCの請求を拒むことができない。
〇 Dが単独で相続したことになるのでCの請求を拒むことができない。(最判昭和63.3.1)
■CがAに対し無権代理行為による損害賠償として1000万円を請求したところ,Aが死亡してその地位をBが単独で相続した場合には,Bは,無権代理行為の追認を拒絶することにより,無権代理行為による損害賠償責任を免れることができる。
× 死亡したAが無権代理行為の追認を拒絶していなければ、相続人Bは追認拒否権を行使しても損害賠償責任を免れることができない(最判 昭和48年7月3日)
■CがBに対し甲不動産の引渡しを求めたところ,Bが死亡してその地位をAが他の相続人とともに共同で相続した場合には,Aは,Cから当該売買契約に基づく甲不動産の引渡請求をされたときは,他の相続人とともに無権代理行為の追認を拒絶してCの請求を拒むことができる。
〇 共同で相続した場合、他の相続人とともに無権代理行為の追認を拒絶してCの請求を拒むことができる。(最判平5.1.21)他の相続人と追認を拒否できないという判例はない。
2010年(平成22年)民法
問題 相隣関係に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■共有物の分割によって袋地を生じた場合に,袋地の所有者が,公道に至るため,他の分割者の所有する土地について有する通行権は,当該他の分割者の所有する土地に特定承継が生じた場合であっても,消滅しない。
〇 共有物の分割によって袋地を生じた場合に,袋地の所有者が,公道に至るため,他の分割者の所有する土地について有する通行権は,当該他の分割者の所有する土地に特定承継が生じた場合でも消滅しない。(法213.1,最判平2.11.20)
民法213条で規定する囲繞地通行権は,通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合でも消滅しない。(最判平2.11.20)
■自動車による通行を前提とする囲繞地通行権は,囲繞地の所有者の承諾がなければ成立しない。
× 徒歩・自転車・自動車で通行を前提とする囲繞地通行権でも囲繞地通行権は成立する。(最判平成18・3・16)
■他の土地及び水路によって囲まれており,水路を通行すれば公道に至ることができる土地の所有者は,公道に至るために,当該他の土地を通行することはできない。
× その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)及び水路によって囲まれている場合,
①「その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)」を通行することもでき②池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるとき(このような土地を 「準袋地」という。)も同様とする。
(民210.1~2)
袋地の所有者が袋地を囲んでいる他の土地(囲繞地)の所有者に対して通行権を主張する場合,所有権移転登記(対抗要件)を具備することなく袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して囲繞地通行権を主張することができる。 (最判昭47・ 4 ・14)
■他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の譲受人は,袋地について所有権の移転の登記を経由しなくとも,その袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して,公道に至るため,囲繞地を通行することができる権利(以下「囲繞地通行権」という。)を主張することができる。
〇 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の譲受人は,袋地について所有権の移転の登記を経由しなくとも,その袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して,公道に至るため,囲繞地を通行することができ
る。袋地の所有権を取得した者は、所有権移転登記(対抗要件)を具備することなく袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して囲繞地通行権を主張することができる。 (最判昭47・ 4 ・14)。
■囲繞地について囲繞地通行権を有する袋地の所有者が,囲繞地に通路を開設するためには,囲繞地の所有者の承諾を要する。
× 囲繞地について囲繞地通行権を有する袋地の所有者は,囲繞地に通路を開設することができる。(民211.2)
通路を開設する際に囲繞地の所有者(他の土地の所有者)の承諾を得る必要はない。
2020年(令和2年)民法
問題 次の事例のうち、判例の趣旨に照らしAがCに対して(Dが登場する書例ではDに対して)不動産又は動産の所有権を主張することができるか正誤を答えて下さい。
■Aは、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していた。Bは、当該不動産の登記がBの名義になっていることを利用して、善意のCに当該不動産を売ってしまった。
AはCに対して所有権を主張することができない。善意の第三者Cがいるので、これを保護しなければいけない 。この場合、Cは登記を備えていなくても所有権を主張することができる。 (最判昭和45.9.22)
■Aは、Bに強迫されて自己所有の不動産をBに売ったが、強迫状態を脱し、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取消しまでの間に、Bが善意のCに当該不動産を売ってしまっていた。
AはCに対して所有権を主張することができる。詐欺又は脅迫によって意思表示をしたものは当該意思表示を取り消すことができる。脅迫を理由とする取り消しについては第三者を保護しなければいけないという規定はない。(民96.3反対解釈)
■Aは、B所有の不動産をBから購入したが、いまだ所有権の移転の登記を経由していなかった。Cは、この事情を十分に知りつつ専らAを害する目的で、当該不動産をBから購入して所有権の移転の登記を完了し、さらに、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をした。
AはDに対して所有権を主張することができない。
原則として背信的悪意者を保護する規定がないのでAはCに対して登記することなく不動産の所有権を主張することができる。
しかし本問のようにC(背信的悪意者)がBを害する目的で、当該不動産をBから購入して、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をすれば、Dは善意の第三者になるので、AはDに対して所有権を主張することができない。(最判平8.10.29)
■Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。
AはCに対して所有権を主張することができる。
本問のような占有改定も引き渡しと認められるので「先に引渡しを受けた」Aが所有権を主張することができる。(民183)
■代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。(民183)
■動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。(民178)
■動産の対抗要件は引き渡しである。
■Aは、Bにだまされて自己所有の不動産をBに売ったが、Bの詐欺に気付き、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取り消しまでの間に、Bが善意かつ無過失のCに当該不動産を売ってしまっていた。
AはCに対して所有権を主張することができない。善意かつ無過失(過失がない)のCに取り消しを対抗することができない。(民96.3)
2007年(平成19年)民法
問題 Aには,その親族として,妻B,子C,父D,祖母F(既に死亡している母Eの母)及び孫G(Cの子)がいる場合において, Aについて相続が開始したときのAの相続人の範囲に関し正誤を答えて下さい。
■Aの死亡前にC及びGが既に死亡していた場合にはFは, Eに代わってAの相続人となる。
× Aの直系尊属Eが死亡しているが、直系尊属に代襲相続が認められていないのでFは相続人になることができない。よってBとDが相続人になる。(民889.1.1、民890)
■Aの死亡前にAとBとが離婚しBがCの親権者と定められていた場合であっても, Cは, Aの相続人となる。
〇 Aの死亡前にAとBとが離婚しBがCの親権者と定められていた場合でも,CはA,Bが離婚しBが親権者と定められても,CはAの相続人となる。(民887.1)
■Cは, Aの死亡前に故意にBを殺害しようとしたが未遂に終わった場合には,これにより刑に処せられたときであっても, Aの相続人となる。
× 殺人及び殺人未遂により刑に処せられたものは、相続人になることができない。(民891.1)
但し過失致死の場合は相続人になれる。
■Cが相続の放棄をした場合にはGは, Cを代襲してAの相続人となる。
× 相続人が相続を放棄すれば代襲相続を認めることはできない(民887.2)
■AとCとが死亡しその死亡の先後が明らかでない場合には, Dは, Aの相続人となる。
× AとCとが死亡しその死亡の先後が明らかでない場合には,同時に死亡した者と推定する。このことを同時死亡と呼ぶ。(民32.2)
GがCを代襲するのでAの相続人となり、Dは相続人にならない。よって相続人は妻Bと孫Gになる。(民887.2)
2014年(平成26年)民法
問題 意思表示に関する記述のうち、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■ AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、Bが死亡し、AB間の売却が仮装のものであることについて善意のCがBを単独で相続した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
× AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、Bが死亡し、AB間の売却が仮装のものであることについて善意のCがBを単独で相続した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
Bから相続を受けたCは第三者にならないので保護されない。(最判昭和42.6.29)
■ AがBの詐欺により甲土地をBに売却した後、Bは、詐欺の事実について善意であるが、そのことについて過失があるCに甲土地を売却した。その後、Aが詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
○ 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96)
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(民96.2)
前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(民96.3)
AがBの詐欺により甲土地をBに売却した後、Bは、詐欺の事実について善意であるが、そのことについて過失があるCに甲土地を売却した。その後、Aが詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合、Cは、「善意でかつ過失がなければ」Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することはできるが、「善意でも過失があれば」Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することはできない。
■ AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、Bから甲土地を買い受けたCが、AB間の売却が仮装のものであることについて善意であった場合には、Cは、BからCへの甲土地の所有権の移転の登記がされていなくても、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
○ 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効となる。この場合、意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。Cは、善意の第三者になるので登記することなくA及びBに対抗することができる。(民94.2)
■ AがBの強迫により甲土地をBに売却した後、Bは、強迫の事実について善意で、そのことについて過失がないCに甲土地を売却した。その後、Aが強迫を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
× 詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできないが、脅迫による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできる。(民96.3)
AがBの強迫により甲土地をBに売却した後、Bは、強迫の事実について善意で、そのことについて過失がないCに甲土地を売却した。その後、Aが強迫を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
■ AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、甲土地が、Bから、AB間の売却が仮装のものであることについて善意のCに売却され、さらにCから、AB間の売却が仮装のものであることについて悪意のDに売却された場合には、Dは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
× AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、甲土地が、Bから、AB間の売却が仮装のものであることについて善意のCに売却され、さらにCから、AB間の売却が仮装のものであることについて悪意のDに売却された場合でも、善意のCに売却されれば悪意のDはその地位を承継することになるのでAに対抗することができる。(民94.2)
2022年(令和4年)民法問2
問題 不動産物権変動に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■AとBは甲土地を共有していたところ、Aはその共有持分をCに譲渡したが、その旨の登記はされていない。この場合に、Cは、Bに対して、甲土地の共有持分の取得を対抗することができる。
× AとBは甲土地を共有していたところ、Aはその共有持分をCに譲渡したが、その旨の登記はされていない。この場合、Cは登記をしなければ甲土地の共有持分をBに対抗することができない。(大判大正5.12.7、最判昭和46.6.18)
■A所有の甲土地がAからBに贈与されたが、その旨の登記がされる前にAは死亡した。その後、Aの唯一の相続人であるCは、甲土地をDに売却して、その旨の登記がされた。この場合に、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができる。
× BとDは対抗関係にあるので先に登記を備えたほうが所有権取得を対抗することができる。よってBは登記を備えたDに対抗することができない。(民177)
■A所有の甲土地がAからBに売却されたが、その旨の登記がされる前に、甲土地はAからC、CからDへと順次売却され、その旨の登記がされた。Bに対する関係で、Cは背信的悪意者であるがDは背信的悪意者ではない。この場合に、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。
〇 背信的悪意者は第3者になれないのが一般的であるが、背信的悪意者が善意の第二譲人から譲り受けた場合、背信的悪意者は第一譲人に対抗することができる(最判平成8.10.29)
■A所有の甲土地がAからBに売却されたが、その旨の登記はされていない。この場合に、Bは、権限なく甲土地を占有しているCに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。
× A所有の甲土地がAからBに売却され、その旨の登記はされていないが、Cは不法占拠者になるのでBはその旨の登記がされていなくてもCに対抗することができる。
■A所有の甲土地をBが時効取得した後、その旨の登記がされる前に、Aは甲土地をCに売却してその旨の登記がされた。この場合に、Bは、Cに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。
〇 A所有の甲土地をBが時効取得した後、その旨の登記がされる前に、Aは甲土地をCに売却してその旨の登記がされた。この場合、Bは、Cに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。(最判昭和33.8.28)
■ A所有の甲土地をBが時効取得し、Aは甲土地をCに売却しているので、これは2重譲渡になる。この場合、「先に登記を受けたもの」が優先されることになる。
■類似問題で占有改定の場合は「先に引渡しを受けたもの」が所有権を主張することができる。(民183)
類似過去問 平成19年問2(オ)の問題
オ Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。
オ AはCに対して所有権を主張することができる。
本問のような占有改定も引き渡しと認められるので先に引渡しを受けたAが所有権を主張することができる。(民183)
■代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。(民183)
■動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。(民178)
■動産の対抗要件は引き渡しである。
2008年(平成20年)民法
問 題 無効及び取消しに関して正誤を答えて下さい。
■ 買主が強迫を理由として売買契約を取り消したときは、当該契約は、初めから無効であったものとみなされる。
○ 買主が強迫を理由として売買契約を取り消したときは、当該契約は、初めから無効であったものとみなされる。(民96.1、民121)
(詐欺又は強迫)
■詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96.1)
■相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(民96.2)
■前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(民96.3)
■ 取消権は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権者が取消権を有することを知った後でなければ、時効によって消滅することはない。
× 取消権は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権者が取消権を有することを知らなくても、時効によって消滅する。
■取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。(民124.1)
■取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過により消滅する。(民126)
■ 売買契約が虚偽表示により無効である場合において、売主及び買主がそれぞれ無効であることを知って追認したときは、当該契約は、初めから有効であったものとみなされる。
× 「無効な行為の追認」についての問題である。無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者(売主及び買主)がその行為の無効であることを知って追認(認める・承諾する)をしたときは、追認したときから新たな契約をしたとみなされるのであって、初めから有効であったものとみなすことはできない。(民119)
■相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。(民94.1)
■無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。(民119)
■ 買主が売買契約を締結した当時に意思能力を有しなかったために当該契約が無効とされる場合には、売主は、買主に対し、当該契約に基づく目的物の引渡義務を負わない。
○ 買主が売買契約を締結した当時に意思能力を有しなかったために当該契約が無効とされる場合には、売主は、買主に対し、当該契約に基づく目的物の引渡義務を負わない。
■ 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。(民3.2)
■(原状回復の義務)
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。(民121.2)
■ 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。(民121.2.2)
■ 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。(民121.2.3)
■ 未成年者が法定代理人の同意を得なければすることができない契約をその同意を得ることなく締結した場合において、当該法定代理人が当該契約を追認したときであっても、当該未成年者本人は、法定の期間内に相手方に対して意思表示をすることにより、当該契約を取り消すことができる。
× 未成年者が法定代理人の同意を得なければすることができない契約をその同意を得ることなく締結した場合において、当該法定代理人が当該契約を追認すれば、当該未成年者本人は、法定の期間内に相手方に対して意思表示をしても、契約を取り消すことができない。(民5.1~2、民122)
(未成年者の法律行為)
■未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。(民5.1)
■前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。(民5.2)
■第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。(民5.3)
2023年(令和5年)民法問1
問題 相隣関係に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■土地の所有者は、境界の付近において建物を修繕するため必要があるときであっても、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
〇 土地の所有者が、境界の付近において隣地の使用を請求することができるのは①~③である。(民209.1)令和4年法改正
①境界または付近の工作物の築造、収去、修繕
②境界標の調査または境界に関する測量
③枝の切取り
ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ立ち入ることはできない。(民209.1ただし書き)
損害が発生した場合は、隣地所有者と使用者は、その償金を請求することができる。(民209.4)
■使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。(民209.2)
■第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。(民209.3)
■第1項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。(民209.4)
■隣地所有者が承諾してくれない場合は、隣地所有者等に対して隣地使用の承諾を求める訴訟を提起し、承諾に代わる判決を求めることができ判決を取得すれば、隣地所有者等の承諾がなくても隣地を使用することができます。
■境界線から50センチメートル以上の距離を保たないで建物の建築をしようとする者があるときであっても、建築に着手した時から1年を経過した後は、隣地の所有者は、その建築を中止させることができない。
〇 建物を築造する場合、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければいけない(民234.1)。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、建築を中止させることはできない。ただし損害賠償請求をすることはできる。
■Aがその所有する土地を甲土地と乙土地とに分筆して甲土地をBに譲渡し、これにより甲土地が乙土地及びC所有の丙土地に囲まれた袋地公道に通じない土地となった場合において、Aが乙土地をDに譲渡したときは、Bは、公道に至るため、丙土地を通行することができる。
× 土地の一部が譲渡され袋地になった甲土地の所有者Bは、残余地である乙土地についてのみ通行権を有する。丙土地を通行することはできない。(最判平成2.11.20)
■土地の所有者が隣地の所有者と共同して境界標を設けるときは、その設置の費用は、双方の土地の広狭に応じて分担する。
× 土地の所有者が隣地の所有者と共同して境界標を設けるときは、その設置の費用は、等しい割合で負担する。(民224)
民法で定められている境界についての決まり
①境界標は隣地所有者と共同の費用で設置されるものである
②境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担するもの
③境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
(注意)測量の費用はその土地の広狭に応じて負担する。(民224ただし書き)
■土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を切り取ることができる。
× 境界線を越えた枝を勝手に切り取ることはできない。
■土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えたときは、竹木の所有者に切除させることができる。(民233.1)
■竹木が共有の場合は、各共有者はその枝を切除することができる。(民233.2)
催告したにもかかわらず切除しないときや、所有者が不明のとき、急迫の事情があるときは、土地の所有者は自らが切除することができる。(民233.3)
■隣地の竹木の根が境界線を越えたときは、自らが切除することができる。(民233.4)
令和4年法改正
2016年(平成28年)民法
問題 次の事例のうち,判例の趣旨に照らしAがBに対して土地の所有権を主張することが「できるか」・「できないか」について正誤を答えて下さい。
■未成年者Aは,法定代理人Cの同意を得ないで,A所有の土地をDに売却し,Dは,Aが未成年者でDへの売却についてCの同意を得ていないことを知らないBに対し,その土地を売却した。その後,CがAのDに対する売買の意思表示を取り消した。
AはBに主張できる。 法定代理人CがAのDに対する意思表示を取り消せばAはBに主張できる。
■Bが所有する土地をCに売却して所有権の移転の登記をし,CがAにその土地を売却したが,その所有権の移転の登記をする前に,BがCの代金未払を理由にBC間の売買契約を解除した。
AはBに主張することができない
BがCの代金未払を理由にBC間の売買契約を解除した場合、契約は始めからなかったということになるのでAがBに対して土地の所有権を主張することができない。ただしAが登記を備えていれば主張できる。(大判大正10.5.17)
■Bが所有する土地をCに売却したが,所有権の移転の登記をしないうちに,CがAにその土地を売却した。
AはBに主張できる。
土地の所有権がB→C→Aと移転した場合,BはCに所有権を移転することで無権利者となり,Cから所有権移転を受けたAは所有権移転登記をしていなくてもBに所有権を主張することができる。(最判昭和31.4.24、最判昭和38.3.28、最判昭和43.11.19)
■Cが所有する土地をAに売却したが,所有権の移転の登記をしないうちに,Cの一般債権者Bがその土地について仮差押えをした。
AはBに主張できない。 仮差押えをした一般債権者Bは第3者にあたるので保護されなければいけない。よってAがBに対して土地の所有権を主張することができない。(大判明38.5.1、最判昭和31.4.24、最判昭和38.3.28)
■Cが所有する土地をAに売却したが,所有権の移転の登記をしないうちに,Bが権限がないのにその土地を占拠した。
AはBに主張できる。Bは権限のない無権利者になる。不動産に関する物権の得喪及び変更(変動)は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(民177、大判明治41.12.15、大判昭和25.12.19、大判昭和12.5.20、最判昭和44.6.12)
2010年(平成22年)民法
問題 行為能力に関する次の記述のうち、正誤を答えて下さい。
■ 成年被後見人であるAがBから日用品を買った場合には、Aの成年後見人Cは、Aが成年被後見人であることをBが知っていたときに限り、当該日用品の売買契約を取り消すことができる。
× 成年被後見人であるAがBから日用品を買った場合、Aの成年後見人Cは、Aが成年被後見人であることをBが知っていても、当該日用品の売買契約を取り消すことができない。(民9ただし書き)
■成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。(民9)
■ 未成年者は、取り消すことができることを知って契約を締結した場合には、その契約を取り消すことができない。
× 未成年者は、取り消すことができることを知って契約を締結した場合でも、その契約を取り消すことができる。
■ 未成年者が法定代理人の同意を得ずにしたことを理由として法律行為を取り消すことができる場合には、その取消権の行使は、未成年者が単独ですることができる。
○ 未成年者が法定代理人の同意を得ずにしたことを理由として法律行為を取り消すことができる場合には、その取消権の行使は、未成年者が単独ですることができる。(民120.1)
■ 被保佐人が保佐人の同意を得ずにしたことを理由として法律行為を取り消すことができる場合には、その法律行為の相手方は、保佐人に対し、その法律行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
○ 被保佐人が保佐人の同意を得ずにしたことを理由として法律行為を取り消すことができる場合には、その法律行為の相手方は、保佐人に対し、一箇月以上の期間を定めてその法律行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。(民20.2)
■ 成年後見人は、成年被後見人が後見開始の審判を受ける前に締結した契約について、その締結の時に既に後見開始の事由が存在していたことを証明して、取り消すことができる。
× 成年後見人は、成年被後見人が後見開始の審判を受ける前に締結した契約について、その締結の時に既に後見開始の事由が存在していたことを証明しても、取り消すことができない。(民9)
■成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。(民9)
2024年(令和6年)民法問1
問題 相続が関係する物権変動に関し、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。(なお、DはBに対する関係で背信的悪意者に当たらないものとする)。
■Aが死亡し、その共同相続人であるBとCとの間でAの所有していた土地をBが単独で相続する旨の遺産分割協議が成立したが、その土地について、Bが遺産分割協議を前提とする相続登記をする前に、CがBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分をDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。
× 「遺産分割協議による相続登記をしていないB」は「登記名義人D」に対し、当該土地持分の取得を対抗することができない。
相続人が相続分と異なる権利を遺産分割により取得した場合は、その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができない。よって、Bは、Dに対し当該土地持分の取得を対抗することができない。(最判昭和46.1.26)
■Aが死亡し、BとCがAを共同相続したが、Cが、Aの所有していた土地について、勝手に、Cが単独で取得する旨の相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、相続分に応じた土地持分の取得を対抗することができる。
〇 BとCがAを共同相続したが、Cが勝手に、C単独で取得する旨の相続登記をしているのでBは登記がなくてもDに対抗することができる。(最判昭和38.2.2)
■Aがその所有する土地をBに譲渡したが、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。
× Aがその所有する土地をBに譲渡したが、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができない。この場合、2重譲渡になるので先に所有権登記を備えた者が、不動産の所有権取得を対抗することができる。(最判昭和33.10.14)
■Aがその所有する土地をBに遺贈する旨の遺言をした後に死亡したが、Bがこれに基づく登記をしない間に、Aを相続したCの債権者Dが代位によりその土地について相続登記をしてこれを差し押さえた場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。
× Aを相続したCの債権者Dが代位により土地について相続登記をしてこれを差し押さえたので、「遺贈による登記を受けていないB」は土地所有権の取得を対抗することができない。 遺贈する旨の遺言をした場合、遺贈の遺言なので、被相続人から不動産を譲りうけたものという立場になり、先に所有権登記を備えたほうが権利を対抗することができる。(最判昭和39.3.6、最判昭和46.11.16)
■Aが死亡した後、その法定相続人であるBとCのうちCが適法に相続を放棄したが、Aの所有していた土地について、この放棄を前提とする相続登記がされる前に、Cの債権者Dが代位によりBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分を差し押さえた場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。
〇 Cが適法に相続を放棄したのでCの債権者Dが代位によりBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分を差し押さえても、BはDに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。(最判昭和39.3.6)
2006年(平成18年)民法
問題 公道に至るための他の土地の通行権に関し,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
甲土地,乙土地及び丙土地の位置関係は,下図のとおりであり,甲土地から公道に出るためには,乙土地を通行するより丙土地を通行する方が損害が少ないものとする。
■Cが乙土地及び丙土地を所有している場合において,所有者であるAから甲土地を譲り受けたBが甲土地についてAから所有権の移転の登記を得ていないときは,Bは,乙土地及び丙土地のいずれについても通行権を主張することができない。
× 袋地の所有権を取得した者は,所有権の移転の登記を得ていなくても囲続地通行権を主張することができる。隣地通行権を主張するためには登記を備える必要がない(最判昭和47年4月14日)
■Bが丙土地を所有している場合において,必要があるときは,甲土地を所有するAは,Bが所有する丙土地に公道に至るための通路を開設することができるが,甲土地の地上権者であるCは,丙土地に公道に至るための通路を開設することができない。
× 通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる通行権を有する者は,必要があるときは,通路を開設することができる(民211.2)
そして残余地以外の(囲繞地)土地を通行することはできない。(最判平成2.11.20)
■土地の所有者と同様に地上権者も公道に至るための通路を開設することができる。(民267)
■Cが丙土地を所有し,Aがその所有に係る甲土地及び乙土地のうち乙土地について抵当権を設定していた場合において,当該抵当権の実行としての競売による競落により,Bが乙土地を取得したときは,Aは,乙土地について通行権を主張することができる。
〇 元々Aが甲土地及び乙土地を単独で所有しており、乙土地だけが、「抵当権の実行としての競売による競落により,Bが乙土地を取得したとき」はAが所有する甲土地は袋地となるため、Aは囲続地通行権が成立しするので,Aは乙土地について通行権を主張することができる。(民213、最判平成5.12.17)
■Dが丙土地を所有している場合において,Aが所有する一筆の土地を甲土地と乙土地に分筆して,甲土地をBに譲渡し,その後,乙土地をCに譲渡したときは,Bは,乙土地について通行権を主張することができる。
〇 Aが所有する一筆の土地を甲土地と乙土地に分筆して,甲土地をBに譲渡し,その後,乙土地をCに譲渡してもBは,乙土地について通行権を主張することができる。Bは残余地であるAが所有する乙土地しか通行することができない。(最判平成2.11.20)
■Cが丙土地を所有している場合において,Aが所有する一筆の土地を甲土地と乙土地に分筆して,乙土地をBに譲渡したときは,Aは,乙土地について通行権を主張することができない。
× 1筆の土地を分割することにより、公道に通じない土地が生じた時は,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる(民213条.1)。この規定は,土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合に準用される(民213.2)
2010年(平成22年)民法
問題 次の対話は,不動産の物権変動に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する正誤を答えて下さい。
■教授: Cが占有しているA所有の土地をAがBに売却し,AからBへの所有権の移転の登記がされた後,Cにつき当該土地の取得時効が完成して,Cが時効を援用した場合,Cは,Bに対し,登記なくして当該土地の所有権を主張することができ ますか。
学生: はい。Cは,Bに対し,当該土地の所有権を主張することができます。
〇 第3者が所有権を取得して登記をした後に時効取得したものは登記しなくても時効取得を対抗することができる。(大判大7.3.2、大判大9.7.16、最判昭和41.11.22)
■教授:A所有の土地をAがBに売却したが,AからBへの所有権の移転の登記がされる前に,Cが権原なく当該土地の占有を開始した場合,Bは,Cに対し,登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生: はい。Bは,Cに対し,当該土地の所有権を主張することができます。
〇 Cに権限がないということは、Cは無権利者となるので、所有者は登記がなくてもCに所有権を対抗することができる(最判昭和25.12.19)
■教授: A所有の土地をBがCに売却し,その後BがAから当該土地を買い受けた場合において,いずれの売買契約にも所有権の移転時期や方法に関する特約がないときは,当該土地の所有権は,いつの時点でCに移転しますか。
学生: BがAから当該土地を買い受け,かつ,AからBへの所有権の移転の登記がされた時点で,Cに当該土地の所有権が移転することになります。
× 所有権の移転の時期については、特約がない限りその意思表示があった時に所有権移転の効力は生じる。(大判大8.7.5、最判昭33.6.20) よってAからBが土地を買い受けるという合意があったときにCに所有権が移転することになる。
■教授: A所有の土地をAがBに売却した後AからBへの所有権の移転の登記がされる前に,Bからその登記の申請を受任していたCが,Aから当該土地を買い受け,AからCへの所有権の移転の登記がされた場合,Bは,Cに対し,登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生: はい。Bは,Cに対し,当該土地の所有権を主張することができます。
〇 Bから登記申請を受任していたCが、AからBに物権変動があった事実を知り得た場合、CがA所有の土地をAから買い受け所有権移転登記がされた場合、Cは背信的悪意者になる。
背信的悪意者には第3者保護規定がないので、Bは自己の登記がなくてもCに対して所有権を主張できる。
背信的悪意者は民法第177条の第3者にはなれない(最判昭和43.8.2)。
悪意者は第3者になれるが背信的悪意者は第3者になれない。
■教授: A所有の土地をAがBに売却し,AからBへの所有権の移転の登記がされた後,Aが,Bの債務不履行により,当該売買契約を解除しました。しかし,その解除後,BがCに当該土地を売却し,BからCへの所有権の移転の登記がされた場合,Aは,Cに対し,登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生: はい。Aは,Cに対し,当該土地の所有権を主張することができます。
× A所有の土地をAがBに売却し,AからBへの所有権の移転の登記がされた後,Aが,Bの債務不履行により,当該売買契約を解除した。しかし,その解除後,BがCに当該土地を売却し,BからCへの所有権の移転の登記がされた場合,Aは,所有権復帰の登記をしなければCに対し,土地の所有権を主張することができない。(大判昭和35.11.29)
2017年(平成29年)民法
問題 Aについて相続が開始し、その親族が妻B及び子Cのみである場合の相続に関する記述のうち、正誤を答えて下さい。
■ Bが相続の放棄をした場合には、Bは、Aの相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。
○ 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。(民939)
Bが相続の放棄をした場合には、Bは、Aの相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。
■ B及びCが相続人となる場合には、Bのみが単独で、限定承認をすることができる。
× 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。(民923)
B及びCが相続人となる場合には、Bのみが単独で、限定承認をすることができない。
■ BがAを強迫してAに相続に関する遺言をさせ、その後、Aについて相続が開始したときは、Bは、Aの相続人となることができない。
○ 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者は相続人となることができない。(民891.4)
■ Cが相続の放棄をした場合には、それがBの強迫によるものであっても、Cは、強迫を理由として相続の放棄を取り消すことができない。
× Cが相続の放棄をした場合には、それがBの強迫によるものである場合、Cは、強迫を理由として相続の放棄を取り消すことができる(民919.2)
■ Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から法定の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった場合には、Bは、単純承認をしたものとみなされる。
○ 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(民915.1)ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。(民915.1ただし書)
相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に限定承認又は相続の放棄をしなかった場合には、相続人は単純承認をしたものとみなされる。(民921.2)
2022年(令和4年)民法問3
問題 甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡された場合に、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合にはCは Bの相続人であるDに対し,甲土地の所有権を主張することができない。
× 物権の設定および移転は当事者の意思表示のみで生じる。Cは登記がなくてもBの相続人であるDに対し甲土地の所有権を主張することができる。(民896、最判昭50.10.24)
■AとBとの間の売買契約に基づいてAからBへ甲土地の所有権の移転の登記がされた場合においてAがBによる詐欺を理由としてその売買契約に係る意思表示を取り消した後、 Bへの所有権の移転の登記を抹消する前に BからCへの甲土地の譲渡が行われていたときはCは自己への所有権の移転の登記をしなければAに対し甲土地の所有権を主張することができない。
〇
意思表示を取り消した後、Cへの甲土地の譲渡が行われていたときはCは自己への所有権の移転の登記をしなければAに対し甲土地の所有権を主張することができない。(大判昭和17.9.30)
■甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合であってもCはAに対し,甲土地の所有権を主張することができる。
〇 Aは物権変動当事者になるので、第3者にはならない。よってCは登記をしていなくてもAに対抗できる(大判明41.12.15、最判昭和39.2.13、最判昭和43.11.19)
■甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合にはCは Bに対する登記請求権を保全するためであってもBに代位してAに対しBへの所有権の移転の登記手続を請求することができない。
× CはBに対して登記請求権を有しておりBのAに対しての登記請求権を代位して行使できる。(民423.7、民560、大判明治43.7.6)
■甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合において A、 B及びCの三者間でAからCへ直接登記名義を移転する旨の合意をしたときは Bの債権者であるEは,自己の債権を保全するためBに代位してAに対し Bへの所有権の移転の登記手続を請求することができない。
× AからCへ直接登記名義を移転する旨の合意をしてもBの債権者であるEは,自己の債権を保全するためBに代位してAに対し Bへの所有権の移転の登記手続を請求することができる。(民423)
中間所有者Bの移転登記請求権は失われることはない(最判昭和46.11.30)
2012年(平成24年)民法
問題 Aを被相続人とする代襲相続に関する正誤を答えて下さい。
■Aの子BがAの死亡の後にAの相続を放棄した場合には, Bの子Cは, Bを代襲してAの相続人となる。
× Aの子BがAの死亡の後にAの相続を放棄した場合には,Bの子Cは,Bを代襲してAの相続人とはならない(民887.2、民939)。相続を放棄した場合は、代襲しない。
■Aの子Bが故意にAを死亡するに至らせたために刑に処せられた場合には, Bの子Cは, Bを代襲してAの相続人となる。
〇 Aの子Bが故意にAを死亡するに至らせたために刑に処せられた場合に, Bの子Cがいる場合の問題。
■故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられたAの子Bは相続人となることができない。(民891)
■被相続人Aの子Bが故意にAを死亡するに至らせたために刑に処せられた場合,Bの子Cは,Bを代襲してAの相続人となる。(民887.2)
■相続権を失ったAの子でBの子Cがこれを代襲して相続人となる。(民887)
■Aが家庭裁判所に請求してその子Bについて推定相続人の廃除をした後に死亡した場合には, Bの廃除後からAの死亡時までの間に出生したBの子Cは, Bを代襲してAの相続 人となる。
〇 Aが家庭裁判所に請求してその子Bについて推定相続人の廃除をした後に死亡した場合,Bの廃除後からAの死亡時までの間に出生したBの子Cは,Bを代襲してAの相続人となる(民887.2)
■推定相続人の廃除により相続権を失ったBが死亡しても、Aの死亡時までの間に出生したBの子Cは,Bを代襲して相続人となる。(民887.2)
■Aの死亡時に, その直系卑属がなく, かつ, Aの父Bは既に死亡している場合には, Bの母Cは, Bを代襲してAの相続人となる。
× Aの死亡時に,その直系卑属がなく,かつ,Aの父Bは既 に死亡している場合,父Bの母C(Aの祖母)は,Bを代襲してA の相続人になれない。直系尊属に代襲相続はない。(民887.2、民889.2)
■Aの相続人となるべき者が兄Bのみである場合において, B及びBの子CがAの死亡時に既に死亡しているときは, Cの子Dは, B及びCを代襲してAの相続人となる。
× Aの相続人となるべき者が兄Bのみである場合に,B及びBの子CがAの死亡時に既に死亡しているとき,Cの子Dは,B及びCを代襲してAの相続人となれない(民887.2、民889.2)。
兄弟姉妹の再代襲は認められていない。
2018年(平成30年)民法
問題 意思表示に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■AとBとが通謀して,A所有の甲土地をBに仮装譲渡して所有権の移転の登記をし,さらに,Bが仮装譲渡の事実を知らないCに甲土地を転売し,その後,Cが仮装譲渡の事実を知っているDに甲土地を転売した場合には,Aは,Dに対して甲土地の所有権を主張することはできない。
〇 仮装譲渡の事実を知らないC(善意者)が,仮装譲渡の事実を知っているD(悪意者)に土地を転売した場合,AはDに対抗することができない。転売の過程で一度でも善意者が現れると権利を取得することができる。(大判昭和6.10.24,最判昭和45.7.24,最判昭和47.5.27)
Cが悪意でもDが善意であればAはDに対抗することができない。(大判昭和6.10.24)
■Aが,A所有の甲土地を売却するに当たり,Bにその代理権を与えていたところ,Bが,売買代金を着服する意図で,甲土地をCに売却した場合において,Cが,Bの着服の意図を知らなくても,その意図を知ることができたときは,Aは,当該売買契約の無効を主張することができる。
〇 Aが,A所有の甲土地を売却するに当たり,Bにその代理権を与えていたところ,Bが,売買代金を着服する意図で,甲土地をCに売却した場合において,Cが,Bの着服の意図を知らなくても,その意図を知ることができたときは,Aは,当該売買契約の無効を主張することができる。(最判昭和42.4.20)
■Aが,Bにだまされて,A所有の甲土地をCに売却した場合には,CがBによるAに対する詐欺につき善意かつ無過失(過失がなかった)であったときであっても,Aは,AC間の売買契約を取り消すことができる。
× Cは第3者になり保護されるので、AはAC間の売買契約を取り消すことができない。(民96.1~2)
■詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96.1)
■相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、 「相手方がその事実を知り」、又は「知ることができたとき」に限り、その意思表示を取り消すことができる。 (民96.2)
■民96.2の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(民96.3)
■Aが,A所有の甲土地を売り渡すつもりで,錯誤によりA所有の乙土地をBに対して売り渡した場合には,Aに重大な過失があるときであっても,Bは,当該売買契約の取り消しを主張することができる。
× 意思表示で法律行為の要素に錯誤があり、表意者に重大な過失があれば、表意者は意思表示の取り消しをすることができない。 (民95.3)
意思表示は,その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。表意者Bは、自らその取り消しを主張することはできない。(民95.1)
■ 判例では
Aに重大な過失があるだけでは契約の無効を主張することができないが、「法律行為の要素に錯誤がある場合は無効になる」。表意者に重大な過失があれば無効を主張することはできないし、相手方B及び第三者からも無効を主張することはできない(最判昭和40.9.11)
■Aが,Bに強迫されて,A所有の甲土地をBに売り渡して所有権の移転の登記をし,さらに,Bが事情を知らないCに甲土地を転売して所有権の移転の登記をした場合には,Aがその後にAB間の売買契約を強迫を理由として取り消したとしても,Aは,Cに対して甲土地の所有権を主張することはできない。
× 強迫による意思表示の取り消しは,善意の第3者に対抗することができ、第三者を保護する規定もないのでAは,Cに対して甲土地の所有権を主張することができる。(民96.3)
2011年(平成23年)民法
問 題 遺言に関して、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■ 遺言者が前の遺言と抵触する遺言をしたときは、前の遺言のうち抵触する部分は、後の遺言によって撤回されたものとみなされる。
○ 遺言者が前の遺言と抵触する遺言をしたときは、前の遺言のうち抵触する部分は、後の遺言によって撤回されたものとみなされる。(民1023.1)
■前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。(民1023.1)
■前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。(民1023.2)
■ 夫婦は、同一の証書により共同で遺言をすることができる。
× 夫婦でも、同一の証書により共同で遺言をすることはできない。(民975)
■遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。(民975)
■ 遺言の全文、日付及び氏名がカーボン紙を用いて複写の方法で記載された自筆証書遺言は、無効である。
× 遺言の全文、日付及び氏名がカーボン紙を用いて複写の方法で記載された自筆証書遺言は、有効である。(最判平5.10.19)
■ 遺言執行者の指定は、第三者に委託することができない。
× 遺言執行者の指定は、第三者に委託することができる。(民1006)
■遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。(民1006)
■遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。(民1006.2)
■遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。(民1006.3)
■ 遺言者の推定相続人は、公正証書遺言の証人となることができない。
○ 遺言者の推定相続人は、公正証書遺言の証人となることができない。(民974)
■次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。(民974)
①未成年者
②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
2023年(令和5年)民法問3
問題 共有に関して判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■A、B及びCが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分は各3分の1)について、AがB及びCに無断で自己の単独名義への所有権の移転の登記をした場合には、Bは、Aに対して、Cの持分については所有権移転の登記の抹消登記手続請求することができない。
〇 Bは、Aに対して、Cの持分については所有権移転の登記の抹消登記手続請求をすることができない。Bは自己の持分についてしか抹消登記手続請求をすることができない。(最判昭38.2.22、最判昭59.4.24)
■A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、AがBに無断で宅地造成工事をして当該土地に変更を加えたときは、当該土地の原状の回復が可能であったとしても、Bは、Aに対して、当該土地の原状回復を請求することができない。
× A及びBが所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、
■AがBに無断で宅地造成工事をして土地に変更を加えようとしている時(工事未着工)、Bは妨害排除請求権を行使して工事着工の禁止を求めることができる。
■AがBに無断で宅地造成工事をして土地の工事を着工し、宅地造成工事を進めている場合は、特別な事情が無い限りBは土地の原状回復を求めることができる。(大判大8.9.27、最判平成10.3.24)
■A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、A及びBが共同してCに賃貸している場合において、債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除は、Aが単独ですることができる。
〇 共有物の賃貸借契約契約の解除は、管理行為になる。(最判昭39.2.25)
■共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するのでAが3分の2を所有しているので、Aが単独で解除することができる。(民252)
■当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができる。(民544.1)
■前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。(民544.2)
■A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分は2分の1)がCにより不法に占有されたことを理由として、Aが、Cに対して、その損害賠償を求める場合には、Aは、Bの持分の割合に応じた部分も含めた損害全部につきこれを請求することができる。
× 共有する不動産について不法占拠された場合の各共有者は自分の持分に応じて損害賠償の額を請求できるものであって、他の共有者の分も含めた損害賠償請求をすることはできない。(最判昭41.3.3、最判昭51.9.7、民427、民709)
■A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、CがBのみの承諾を得て占有している場合には、Aは、Cに対して、当該土地の全部の明渡しを請求することができる。
× A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、CがBのみの承諾を得て占有している場合でも 、Aは、Cに対して、当該土地の全部の明渡しを請求することはできない。
■各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。(民249)
■第三者に対して当然に明渡しを請求できるものではない。(最判昭41.5.19、最判昭63.5.20)
2015年(平成27年)民法
問題 占有訴権に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■建物の賃貸借契約が終了したにもかかわらず、賃借人Aが建物の占有を継続する場合には、賃貸人Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することができる。
× 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。(民197)
賃貸人Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することができない。(最判昭和37.3.30)
■AがBに無断でBの所有する土地上に建物を建築して占有している場合において、 Bが当該建物を解体するために重機を当該土地に持ち込もうとしているときは、Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。
〇 占有の訴えを提起することができるのは, 占有者及び他人のために占有をする者である。(民197)
Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。
■Aが自宅の庭先に置いていた自転車をBが盗んで乗り回し、その後、これをCに売り渡した場合には、Aは、Cが占有を始めた時から1年以内であれば、占有回収の訴えにより、自転車の返還を請求することができる。
× 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。(民200.2)
■ 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。(民201)
■Aが占有する土地に隣接地の樹木が倒れてくるおそれがある場合には、A は隣接地の所有者であるBに対し、占有保全の訴えにより、樹木が倒れないようにするための予防措置を講ずるとともに損害賠償の担保を供与することを請求できる。
× 占有保全の訴えの内容は, 妨害の予防又は損害賠償の担保の請求である。(民199)
占有保全の訴えにおいては妨害の予防と損害賠償の担保の請求を一緒に請求することはできない。
■Aが占有する建物の占有をBが奪い、その後、これをCに貸与した場合であっても、Aは、なおBに対し占有回収の訴えにより建物の返還を請求することができる。
〇 Aが占有する建物の占有をBが奪い、その後、これをCに貸与した場合であっても、Aは、なおBに対し占有回収の訴えにより建物の返還を請求することができる。(民202.2、大判昭和5.5.3)
2007年(平成19年)民法
問題 任意代理に関する正誤を答えて下さい。
■Aから何らの代理権も与えられていないBが,Aのためにすることを示して,A所有の不動産をCに売却した場合において,Cが,Bに売買契約を締結する代理権があると信じ,そのように信じたことに正当な理由があるときは,表見代理が成立する。
× Bは何ら代理権も与えられていない無権代理人なので、Cがそのように信じたことに正当な理由があるとはいえないので表見代理は成立しない。
【表見代理が成立する条件】
①本人が相手方に対して、他人(無権代理人)に代理権を与えた旨を表示したこと
②無権代理人が、本人に表示された代理権の範囲内で代理行為をすること
③無権代理人に代理権が存在しないことについて、相手方が善意無過失であること(大判大2.6.26)
■本人Aの許諾を得て任意代理人Bが復代理人Cを選任した場合には,Cの行為によりAに不利益が生じたときであっても,Bは,Aに対し,責任を負うことはない。
× 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(民104)
ただし、復代理人の行為により本人に不利益が生じたとき代理人は本人に対して債務不履行の責任を負う。
https://magazine.zennichi.or.jp/re-notary/1723
■Aの任意代理人Bが,Aのためにすることを示して,Cからその所有する建物を買い受けた場合において,Bが当該建物に瑕疵があることを知っていたときは,Aは,Cに対し,売主の瑕疵担保責任を問うことができない。
〇 売買で建物を購入する場合、建物に瑕疵(欠陥)があった場合、買主は瑕疵(欠陥)があることを知らずに購入した場合、契約解除できる。契約の解除ができなければ損害賠償請求のみできる(民566、1・民570)
売主の代理人Bが瑕疵(欠陥)を知り、Aが知らないという場合は、代理人の代理行為について考えなければいけない。
代理人が詐欺、脅迫、事情を知っている、知らない、意思の不存在で、事実の有無は代理人について決するとされている。代理人が建物の瑕疵を知る限り、AはCに責任を問うことができない。(民101.1)
■建物で瑕疵担保責任を問えるかどうかについて判例は、
売主の瑕疵担保責任を追及できるのは、契約を締結した時に買主が善意無過失だった場合に限られるとしている。(民570、大判大13.6.23)
■不法行為に基づく損害賠償の請求権で請求ができる期間は、
①損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき。
②不法行為の時から20年経過したとき。
■代理権を有しない者がした契約の本人による追認は,その契約を相手方が取り消した後は,することができない。
〇 代理権を有しないものが代理人として契約した場合は、本人が追認しなければ本人に対して効力が生じない。(民113.1)
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。
ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。(民115)
■未成年者も任意代理人になることができるが,未成年者のした代理行為は,その法定代理人が取り消すことができる。
× 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為につ いては、この限りでない(民102)。よって法定代理人が代理行為を行為能力の制限を理由に取り消すことはできない。
2017年(平成29年)民法
問題 占有権に関し,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■悪意の占有者であってもその占有を奪われたときは占有回収の訴えを提起することができる。
〇 占有者でありさえすれば善意か悪意を問わず占有回収の訴えを提起することができる。(大判大正13.5.22)
■善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは,その占有の開始の時から悪意の占有者とみなされる。
× 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは訴えを起こした時から悪意の占有者になる(民189.2)
■法人の代表者が建物を当該法人の機関として占有しつつ,当該代表者個人のためにも占有していた場合には,当該代表者は,その占有を奪われたときであっても,当該代表者個人として占有回収の訴えを提起することができない。
× 占有の訴えを提起できる者とは、占有者と他人のために占有をする者である(民197)。
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する(民180)。物を一時的に短期間だけ預かるような場合は、所有者と認められない。
■ 法人の場合、法人が所有しているということになるので、代表者個人が占有の訴えを提起することはできない(最判昭和32.2.22)
ただし、代表者個人の為に所持する等、特別な事情があれば、代表者個人として占有回収の訴えを提起することができる(最判平成10.3.10)
■代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その代理人がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する。
× 代理人が占有をする場合,本人が代理人に対して以後第3者のためにその物を占有することを命じ,その第3者がこれを承諾した時,第3者は,占有権を取得する(民184)。
「代理人がこれを承諾したとき」ではない。
■代理人によって占有をする場合における占有の善意又は悪意は,その代理人について決する。
〇 代理人によって占有をする場合における占有の善意又は悪意は,その代理人について決する(大判大正11.10.25)
2013年(平成25年)民法
問題 法律行為に付された条件に関し,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■「Aが大学に合格したら, BはAに対しB所有の乙建物を贈与する。」旨の契約をA及びBが締結した場合において, Cの放火により乙建物が滅失したときは, Aは,大学に合格する前であっても, Cに対し乙建物の価値相当額の損害の賠償を請求することができる。
× 大学に合格する前のことなので、条件成就前の損害賠償請求は認められない。(民128~民130、名古屋高裁昭和30.7.19)
そして建物の価値相当まで請求することはできない 。
■「Aが結婚したら, Bは, Aに対し, B所有の甲土地を贈与する。」旨の契約をA及びBが締結した場合には当事者は甲土地について条件付所有権の移転の仮登記をすることができる。
〇 条件付所有権の移転の仮登記をすることができる。(大判昭和11.8.7)
■権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとする時は仮登記をすることができる。(法105.2)
■甲土地の買主が甲土地の売買代金の支払を遅滞している場合において,売主がした「2週間以内に甲土地の売買代金を支払わないときは,売買契約を解除する。」旨の意思表示は,単独行為に条件を付すものであるから,無効となる。
× 売主の意思表示は有効になる。 履行の催告と同時に催告期間内に適法な履行のないことを停止条件とする解除の意思表示をすることは有効となる。(大判明治43.12.9)
■「Aが大学で進級することができなかったら, Bは, Aに対して支払ってきた奨学金をその後は支払わない。」旨の契約をA及びBが締結した場合において, Aが大学で進級することができなかったときは, BはAが大学で進級することができなかったことを知らなくても, Aに対して奨学金を支払う義務を免れる。
〇 解約条件の場合、停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。(民127.1)
■農地の売買契約において「農業委員会の許可を受けなければ,農地の所有権は移転しない。」旨の条項を設けた場合において,売主による故意の妨害行為があったために農業委員会の許可を受けることができなかったときは買主は,農業委員会の許可を受けたものとみなして,当該農地の所有権を取得することができる。
× 農地売買で農地の売主が許可を妨げたとしても、買主は条件が成就したものとみなされるので、買主は農業委員会の許可を受けたものとみなして,当該農地の所有権を取得することはできない。(民130、最判昭36.5.26)
2012年(平成24年)民法
問題 Aが所有し,所有権の登記名義人である甲土地についての物権的請求権に関するもので判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■Bが甲土地に地役権を有する場合において,Cが違法に,かつ,恒常的に甲土地に自動車を駐車し,Bによる地役権の行使を妨げ,地役権を侵害しているときは,Bは,地役権に基づき,Aに対してはCによる地役権侵害行為を禁止するために必要な措置をとるように求めることはできるが,Cに対しては地役権侵害行為の禁止を求めることはできない。
× ■地役権は土地に対する物権となり、承役地の利用を妨げられていれば、地役権者は、回復する為の「妨害排除請求権」・「妨害予防請求権」を請求することができる。(最判平17.3.29)
ただし、地役権者は「土地明渡し(引渡し請求権)」までは認められていない。
■地役権者は承役地の一部に車両を恒常的に駐車させている者に対して
その禁止を求めることができる。(最判平17.3.29)
■Bが甲土地に地役権を有する場合において,Cが違法に,かつ,恒常的に甲土地に自動車を駐車し,Bによる地役権の行使を妨げ,地役権を侵害しているときBは地役権に基づき,Aに対してはCによる地役権侵害行為を禁止するために必要な措置をとるように求めることができ,Cに対しては地役権侵害行為の禁止を求めることができる。
■Cは,乙動産を所有するBに無断で乙動産を持ち出し,A及びBに無断で甲土地上に乙動産を放置した。この場合において,Aが甲土地の所有権に基づき乙動産を所有するBに対して乙動産の撤去を請求したときは,Bは、乙動産を放置したのがCであることを理由に,その請求を拒絶することができない。
○ Cは,乙動産を所有するBに無断で乙動産を持ち出し,A及びBに無断で甲土地上に乙動産を放置した。この場合において、Aが甲土地の所有権に基づき乙動産を所有するBに対して乙動産の撤去を請求したときは,Bは,乙動産を放置したのがCであることを理由に、その請求を拒絶することができない。
物権的請求権は故意や過失に関係無く「現在妨害を行っている者」か「その恐れのある者(妨害予防のため)」が、甲土地上に乙不動産を放置したことに対して行うことができる。
■Bは,Aに無断で、甲土地上に乙建物を建て,乙建物につきBを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記をした。その後,Bは、Cに対し、乙建物を売却し,Cが乙建物の所有権を取得したが,乙建物の所有権の登記名義人は,Bのままであった。この場合において,Aは甲土地の所有権に基づき,Bに対しては乙建物の収去を求めることができるが,Cに対しては乙建物の収去を求めることはできない。
× 甲土地の所有者Aは、乙建物の所有権の登記名義人Bに対して乙建物の収去を求めることができ、Bから乙建物を購入した乙建物の所有者Cに対しても収去を求めることができる。(最判平6.2.8)
物権的請求権とは、物権に基づいて物権に対しての侵害を除去したり、侵害を予防することを請求する権利のこと。「私の所有物なので返して下さい」「私の所有物なので妨害をしないで下さい」ということです。
人に対しての権利を「物権的請求権」といい、①返還請求権、②妨害排除請求権、③妨害予防請求権の3つに区分する。
■Bは,20年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地を占有していた。この場合において,Bが取得時効を援用した後は,Aは,Bに対して,甲土地につき,所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。
○ Bは,20年間,所有の意思をもって、平穏に,かつ,公然と甲土地を占有していた。この場合において、Bが取得時効を援用した後に,Aは、Bに対して、甲土地につき、所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。時効完成時の所有者Aがいる場合でも時効取得者Bは登記することなく土地の取得を対抗することができる。(大判大7.3.2)
■Aは,Bに対し、甲土地を売却し,Bが甲土地の所有権を取得したが,甲土地の所有権の登記名義人は,Aのままであった。この場合において,甲土地をCが違法に占有しているときは,Bは,甲土地の所有権に基づき,Cに対し,甲土地の明渡しを求めることができる。
○ Cは他人の土地を違法に占有しているので不法占拠者となりCは第3者として保護されない。Bは自己のために登記をしていない場合でもCに明渡しを求めることができる。甲土地の所有権登記名義人は、Aのままで、甲土地の所有権を取得したBは甲土地の物権的請求権に基づき,Cに対し,甲土地の明渡しを求めることができるので「妨害排除請求権」を行使することが可能になる。
■不動産に関する物権について(得喪及び変更)は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(民177)
※①~⑤の者に対して登記なくして「所有権を対抗」でき,「明渡しを請求」することができる。
①全くの無権利者(その譲渡人等)
②不法占拠者・不法行為者
③背信的悪意者
④詐欺・脅迫により登記申請を妨げた者
⑤他人のために登記申請義務のある者
2019年(令和元年)民法
問題 民法上の代理又は無権代理に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし,正誤を答えて下さい。
■ Bが,Aから与えられていた代理権限を越えて,Aの代理人としてCとの間で契約を締結した場合において,CがBに権限があると信ずべき正当な理由があるが,Cがそのように信ずるに至ったことについてAに過失がないときは,Aは,Bの行為について,表見代理による責任を負わない。
× Bが,Aから与えられていた代理権限を越えて,Aの代理人としてCとの間で契約を締結した場合において,CがBに権限があると信ずべき正当な理由があるが,Cがそのように信ずるに至ったことについてAに過失がないときは,Aは,Bの行為について,表見代理による責任を負う。(民110)
■ Aから何らの代理権を与えられていないBが,Aの代理人と称してCとの間で契約を締結した場合には,Cは,AがCに対して追認をした後であっても,その契約を取り消すことができる。
× Aから何らの代理権を与えられていないBが,Aの代理人と称してCとの間で契約を締結した場合には,Cは,AがCに対して追認をするまでの間であればその契約を取り消すことはできるが追認をした後は、契約を取り消すことができない。(民115)
■ Aからの委任により代理人となったBは,やむを得ない事由がある場合には,Aの許諾を得ることなく,復代理人を選任することができる。
○ 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(民104)
やむを得ない事由がある場合、本人の許諾を得ることなく、復代理人を選任することができる。
■本試験平成29年問1エに類似問題があるので比較してみる。
問:本人Aの許諾を得て任意代理人Bが復代理人Cを選任した場合には,Cの行為によりAに不利益が生じた場合でもBはAに対し責任を負うことはない。
エ× 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(民104)
■任意代理人
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があれば、復代理人を選任することができる。(民104)
この場合、復代理人の行為で本人に不利益が生じた場合、代理人は本人に対して責任を負わなければいけない。
■法定代理人
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。(民105)
■ 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,相手方において代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときを除き,代理人自身のためにしたものとみなされる。
○ 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,相手方において代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときを除き,代理人自身のためにしたものとみなされる。(民100)
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたとき、その意思表示は本人に対して直接にその効力を生ずる。(民100ただし書き)
■ Aが未成年者Bを代理人に選任し,BがAのためにすることを示してCに意思表示をした場合には,Aは,Bが未成年者であることを理由として,その意思表示を取り消すことはできない。
○ Aが未成年者Bを代理人に選任し、BがAのためにすることを示してCに意思表示をした場合、Aは、Bが未成年者であることを理由として、その意思表示を取り消すことはできない。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為につ いては、この限りでない。(民102)
2021年(令和3年)民法第1問
問題 遺産分割に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■相続人は、遺産分割の間は相続開始の時に存した
金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に自己の相続分を乗じた額(法務省令で定める額を限度とする。)については単独でその権利を行使することができる。
〇 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。
この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。(民909.2)
■共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人がその協議において負担した債務を履行しないときは、その債権を有する相続人は、債務不履行を理由としてその協議を解除することができる。
× 遺産分割協議を解除するには全員の合意がなければ解除できない。共有者の一人からはできない。債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。(最判平成元.2.9)
■被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることはできない。
× 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。(民908)
■相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合に、他の共同相続人において既に遺産分割協議が成立していたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
〇 他の共同相続人において既に遺産分割協議が成立していたときは、再分割をすることができないので、価額のみによる支払いの請求権を有する。(民910)
■相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始の時に法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。
〇 可分債権があるときは、その債権は相続開始の時に法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。(最判昭29.4.8)
■相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。(民898)
■可分債権各債務者は、「それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う」 そして各相続人の相続分に応じて当然に分割され帰属(承継)される。 (大決昭5.12.4)
2016年(平成28年)民法
問題 地上権に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■地上権者は、設定契約において特段の定めがない場合であっても、土地の所有者に対して地代の支払義務を負い、その場合の地代の額は、当事者の請求により裁判所が定める。
× 地上権があるからという理由で、地代の支払義務を負うものではない。ただし、特約で地代の支払義務が発生する契約をした場合は支払義務を負う。(民266.1)
■地上権を時効によって取得するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在し、かつ、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることが必要である。
〇 所有権以外の取得時効の用件としては自己のためにする意思が必要とされている。(最判昭和43.10.8、最判昭和45.5.28、最判昭和46.11.26)
地上権を時効によって取得するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在し、かつ、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることが必要である。
■ 所有権を時効取得するためには所有の意思を持って占有しなければいけない。
■ 地上権・賃借権を時効取得するためには自己のためにする意思を持って占有しなければいけない。
■工作物の所有を目的として設定された地上権は、設定後にその工作物が滅失したときは、消滅する。
× 工作物を所有するために、土地に設定されている地上権は土地が滅失すれば消滅する。しかし土地の上に作った工作物が滅失しても地上権は消滅しない
■定期の地代を支払うべき地上権者が、引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは、土地の所有者は、地上権の消滅を請求することができる。
〇 地上権者が、引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは、土地の所有者は、地上権の消滅を請求することができる。(民266.1、民276)
■地上権者は、土地の所有者の承諾を得ないで、地上権を譲渡し、又は地上権を目的とする抵当権を設定することができる。
〇 地上権者は、土地の所有者の承諾を得ることなく地上権を譲渡し、又は地上権を目的とする抵当権を設定することができる。
2009年(平成21年)民法
問題 次の対話は、甲建物の賃借人をA、所有者兼賃貸人をBとした場合の甲建物等の所有権の取得に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対し、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■教授:AがBの同意を得てAが提供した材料を用いて出窓を増築した場合において、AB間に所有権の取得について特約がないときは、出窓の所有権の帰属は、どうなりますか。
学生:出窓には独立性が認められないので、AがBの同意を得ていても、出窓の所有権は、Bに帰属します。
〇 AがBの同意を得てAが提供した材料を用いて出窓を増築した場合、Aは権原に基づき建物に出窓を付合させても、出窓は独立性がなく建物に付合することになるので、所有者兼賃貸人Bに帰属します。(民242ただし書き)
■教授:では、AがBの同意を得ないで甲建物に改装をした結果、改装前に1.000万円であった甲建物の価格が改装後に3.000万円となった場合には、甲建物の所有権の帰属は、どうなりますか。
学生:AがBの同意を得ていなくても、改装によって甲建物の価値が倍以上に増加していますから、甲建物の所有権は、Aに帰属します。
× 賃貸人に無断でAが提供した材料を用いて増築しても所有権が賃借人に帰属することはない(民608.2)
■教授:AがBの同意を得ないで甲建物の一室にエアコンを設置した場合には、エアコンの所有権の帰属は、どうなりますか。
学生:AがBの同意を得ていないので、Bが所有権を取得します。
×エアコン(建物付加物)の所有権はA(賃借人)がB(所有者兼賃貸人)の同意を得ていなくてもA(賃借人)が所有権を取得します。エアコンは甲建物に付合しない。(民598、民616)
■教授:ところで、Aが増築した部分の所有権をBが取得することとなる場合に、AはBに対し、金銭の支払を請求することができますか。
学生:その場合であっても、Aは、当該部分を継続して使用することができますので、Bに対しての金銭の支払いを請求することはできません。
× 建物の貸借人が増築した場合、増築部分は建物に付合する。増築部分の所有権が賃貸人に帰属すると賃借人は、賃貸人に対し不当利得の規定に従い補償金の請求ができる。(民248)
■教授:AがBの同意を得て、平屋の甲建物の2階として、独立した玄関口があり、かつ、1階とは内部で通じていない居宅を増築した場合において、AB間に所有権の取得について特約がないときは、甲建物の2階部分の所有権の帰属はどうなりますか。
学生:甲建物の2階部分が独立性を有し、区分所有権の対象となる場合には、Aがその所有権を取得します。
〇 賃借人が賃貸人の同意を得て、増築工事をして、増築部分が独立性をそなえていれば、増築部分の所有権は賃借人Aが取得する。(民242ただし書き、最判昭和44.7.25)
2005年(平成17年)民法
問題 時効に関して、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■取得時効が成立するためには、他人の物を占有することが必要であり、自己の所有物を占有しても、その占有者は、所有権を時効取得しない。
× 自己の所有物を占有しても、その占有者は、所有権を時効取得する(最判昭和42.7.21)
■取得時効が成立するためには、所有の意思をもって物を占有することが必要であり、賃借の意思をもって物の占有を継続しても、その占有者は、権利を時効取得しない。
× この文章は所有権の取得時効を成立させるためのことだけを述べている。
所有権以外の取得時効が成立するための占有は自主占有でなくてもいいので、自己のためにする意思をもって占有すればよい 。(最判昭和43.10.8)
■物の所有者は、その物に対する所有権を消滅時効によって失うことはないが、他人が当該所有権を時効取得した場合には、当該所有権を失う。
〇 所有者が使用することなく放置しておいても所有権を消滅時効によって失うことがないというのが原則であるが(民167.2)、「他人が占有を続け、取得時効の要件を満たせば、所有者は所有権を失う」。
※消滅時効となる権利には永小作権、地役権、地上権、抵当権、用益物権、債権があるが、所有権は消滅時効にならないのが原則である。(民167.2)
■物の所有者がその物を占有している者に対して所有権に基づく引渡請求の訴えを提起した場合には、取得時効が中断するが、その訴えが却下されたときは、時効中断の効力は生じない。
〇 所有権に基づく引渡請求の訴えを提起した場合には、取得時効が中断するが、その訴えが却下されたときは、時効中断の効力は生じない。
■物の所有者は、その物を不法に占有する者に対し、所有権に基づく妨害排除請求権を有するが、不法占有の開始時から10年間当該請求権を行使しなかった場合には、当該請求権は、時効により消滅する。
× 所有権に基づく妨害排除請求権、妨害予防請求権、返還請求権については時効がない。(民167.2)
2004年(平成16年)民法
問題 AがBに対して100万円を貸し付けた後その返還期日を経過した事例に関するもので判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■時効の完成後にBがAに対して債務の承認をしたときは、Bは、その後その時効の援用をすることができない。
〇時効の完成後にBがAに対して債務の承認をしたとき、Bは、その後その時効の援用をすることができない。(最判昭和41.4.20)
■債務者が時効完成後に債務の承認をした場合、時効完成の事実を「知っていても・知らなくても」時効の援用をすることができない。(最判昭和41.4.20)
■AがBに対して、貸金の返還の催告をした後、その6か月以内に再び催告をしたときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
× AがBに対して貸金返還の催告して、催告後、6か月以内に2回目の催告をしても、時効中断の効力が生じることはない。あくまでも1度目の催告から6か月を経過するまでの間だけである。(民153)
催告を何度しても時効の中断を繰り返すことができない(大判大正8.6.30、最判平成25.6.6)
■催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成しない。(民150.1)
■催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。(民150.2)
■AがBに対して貸金返還請求の訴えを提起した場合には、その訴訟手続におけるAの権利行使の意思の表示は、その訴えが取り下げられたときにおいても、Bに対する催告として効力を有するため、訴えの取り下げの時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
〇 裁判上の請求があると時効の完成が猶予されるが、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合、その終了の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。(民147.1ただし書き)
訴えが取り下げられたときにおいても、Bに対する催告として時効の更新の効力を有する。(最判昭和45.9.10)
■AのBに対する貸金返還請求を認容する判決が確定したときは、裁判上の請求によって更新した時効は、当該判決が確定した時から、新たにその進行を始める。
〇 AのBに対する貸金返還請求を認容する判決が確定したときは、裁判上の請求によって更新した時効は、当該判決が確定した時から、新たにその進行を始め、新たな時効期間を計算することになる。
裁判上の請求によって更新した時効は、判決が確定(裁判が確定)した時から、新たにその進行を始める。 (民147.2)
時効の更新とは
これまで進行してきた時効期間がゼロにリセットされ、最初から再び時効期間が始まることです。10年で時効が成立する債権が、9年経った時点で裁判の確定判決によって時効が更新されると、その時点から再び10年の時効期間がスタートします。
時効が更新される場合とは
①裁判上の請求
裁判を起こすと時効完成が猶予されます。
そして裁判上の請求とは、裁判所に対して訴訟を提起すること(裁判を起こすこと)です。
「裁判を起こすと」、それにより時効完成が猶予されます。
■そして、その後、「訴訟を取り下げたり」、「裁判所に却下された」場合、 取り下げや却下されてから6ヶ月間は時効完成が猶予されます。
■その後、確定判決をもらったのであれば(勝訴が確定したのであれば)、その日に時効が更新されます。
②承認
③強制執行・競売
■「時効の更新」と「時効の完成猶予」の違い
「時効の更新」は時効期間がゼロにリセットされるが「時効の完成猶予」は時効完成が一時的にストップするだけでゼロからのリセットはされない。
時効期間が「リセットされるか」、それとも「一時停止されるか」という点です。
時効の完成猶予とは
時効の成立が間近に迫っているときに、一定の事由が発生することで、その期間だけ時効の完成が一時的にストップすることです。時効の進行はリセットされず、猶予期間が終わると、それまでの時効期間に加えて再び時効の進行が再開します。10年で時効が成立する債権が、9年経った時点で債権者が裁判上の請求を行った場合、裁判が終了するまでの間は時効が完成しません。
裁判が取り下げや却下で終了した場合でも、その終了時から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
時効完成が猶予がされる場合とは
裁判上の請求(訴訟の提起)
仮差押え、
催告(内容証明郵便を送るなど)
協議を行う旨の合意
天災
■時効の完成前にBがAに対して債務の一部弁済として50万円を支払ったときは、当該債務の残部について時効の更新の効力は生じない。
× 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。(承認による時効の更新 民152.1)
前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。(承認による時効の更新 民152.2)
BがAに対し債務の一部弁済として50万円を支払えば、債務の残部についても承認したということになるので時効の更新の効力が生じる。
債務の一部弁済は債務の承認を表白する。(民152.1、大判大8.4.1、大判大8.12.26)
2016年(平成28年)民法
問題 遺産分割に関し判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは次のうちどれか。
■遺産分割協議が成立したが、相続人Aがこの協議において相続人Bに対して負担した債務を履行しない場合には、Bは、遺産分割協議を解除することができる。
× 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。(民541)
遺産分割協議の場合、契約と異なり、共同相続人全員による合意がなければいけない。
債務を履行しない(債務不履行)解除は認められていない。(最判平成元.2.9)
■遺産分割協議が成立した後であっても、共同相続人全員の合意で分割協議を解除した上で再度分割協議を成立させることができる。
〇 遺産分割協議が成立した後であっても、共同相続人全員の合意で分割協議を解除した上で再度分割協議を成立させることができる。(最判平成2.9.27)
■被相続人が「甲不動産は相続人Cに相続させる」との遺言をしていた場合であっても、他の相続人が甲不動産を取得することとし、Cは遺産中の他の財産を取得することとする旨の遺産分割をすることができる。
× 被相続人が「甲不動産は相続人Cに相続させる」との遺言があるので、他の相続人が甲不動産を取得することとし、Cは遺産中の他の財産を取得することとする旨の遺産分割をすることはできない(最判平成3.4.19)
■相続放棄をした者は、他の共同相続人の同意があったとしても、遺産分割協議の当事者となることができない。
〇 相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされる。(民939)
相続放棄をした者は、他の共同相続人の同意があったとしても、遺産分割協議の当事者となることができない。
■相続財産中の不動産につき、遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は、登記を経なくても、当該分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、当該分割による権利の取得を対抗することができる。
× 相続財産中の不動産につき,遺産分割により法定相続分と異なる権利を取得した「相続人は,登記を経なければ」当該分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し,当該分割による権利の取得を対抗することができない。(最判昭和46.1.26)
2009年(平成21年)民法
問題 意思表示について正誤を答えて下さい。
■AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aの意思表示がBの強迫によるものであった場合において、Cが、Bから当該土地を買い受け、かつ、強迫の事実について善意であるときは、Aは、Cが買い受けた後、Bに対する意思表示を取り消しても、当該取消しをCに対抗することができない。
× 「強迫による意思表示」の場合、表意者は意思表示を取り消すことができる。(民96.1)
■詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96.1)
■相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。(民96.2)
■前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(民96.3)
■AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aの意思表示がBの詐欺によるものであった場合には、Aは、当該意思表示を取り消すことができる。
〇 AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aの意思表示がBの詐欺によるものであった場合には、Aは、当該意思表示を取り消すことができる。(民96.1)
■ AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、当該契約がAとBとが通謀して行った虚偽のものであった場合において、Cが当該契約の有効性を過失なく信じてBから当該土地を買い受けたときは、Aは、Cに対し、当該契約が無効であることを主張することができない。
〇 AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、当該契約がAとBとが通謀して行った虚偽のものであった場合において、Cが当該契約の有効性を過失なく信じてBから当該土地を買い受けたときは、Aは、Cに対し、当該契約が無効であることを主張することができない。
Cは第3者として保護されるべきなので、AはCに対し、当該契約が無効であることを主張することができない。
■相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。(民94.1)
■意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。(民94.2)
■AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aが真意では売り渡すつもりがなかった場合において、BがAの真意を知っていたときは、当該契約は、無効である。
〇 AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aが真意では売り渡すつもりがなかった場合において、BがAの真意を知っていたときは、当該契約は、無効である。(民93、民93ただし書き)
■意思表示は、表意者がその真意ではないことを知っていたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
■AB間でAがBに土地を売り渡す契約を締結したが、Aの意思表示について法律行為の要素に錯誤があった場合において、Aに重大な過失があったときは、Aはその意思表示の無効を主張することができない。
〇 Aに重大な過失があったとき、Aはその意思表示の取り消すことができない。(民95ただし書き)
■意思表示は、法律行為の要素に錯誤があれば取り消すことができる。(民95)
ただし、Aに重大な過失があったとき、Aは意思表示を取り消すことはできない。(民95ただし書き)
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合で意思表示の取り消しをすることができる事例。
①相手方が表意者に錯誤があることを知り得た(民95.3)
②重大な過失によって知らなかったとき(民95.3)
③相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(民95.3)
2005年(平成17年)民法
問題 遺留分に関して正誤を答えて下さい。
■遺留分権利者は、相続開始後に限り、自己の遺留分を放棄することができる。
× 相続開始前でも家庭裁判所の許可を受ければ、自己の遺留分を放棄できる。(民1043.1)
■遺留分の減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で消滅するほか、相続開始の時から10年で消滅する。
〇 遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で消滅し、相続開始の時から10年で消滅する。(民1042)
■被相続人の遺贈によって遺留分を侵害された相続人は、受贈者に遺留分の減殺を請求したが、受贈者が無資力であったために損失を被った場合には、他の共同相続人に対し、相続分に応じて担保責任を追及することができる。
× 被相続人の遺贈によって遺留分を侵害された相続人は、受贈者に遺留分の減殺を請求したが、受贈者が無資力であったために損失を被った場合でも、他の共同相続人に対してまで、相続分に応じた担保責任を追及することはできない。(民1037)
■減殺されるべき遺贈及び贈与があるときは、まず遺贈を減殺し、次いで贈与を減殺するが、減殺されるべき遺贈が数個あるときは、遺贈の目的の価額に応じて減殺し、減殺されるべき贈与が数個あるときは、後の贈与から順に減殺する。
〇減殺されるべき遺贈及び贈与があるときは、まず遺贈を減殺し、次いで贈与を減殺するが、減殺されるべき遺贈が数個あるときは、遺贈の目的の価額に応じて減殺し、減殺されるべき贈与が数個あるときは、後の贈与から順に減殺する。(民1034、民1035)
■被相続人の配偶者及び直系尊属が相続人となる場合には、配偶者の遺留分は被相続人の財産の2分の1、直系尊属の遺留分は被相続人の財産の3分の1となる。
× 遺留分権利者が直系尊属だけの場合は、被相続人の財産の3分の1になる。その他の場合には2分の1になる。
よって被相続人の配偶者及び直系尊属が相続人となるので「その他」に該当するので2分の1になる(民1028)
2004年(平成16年)民法
問題 A所有の甲土地についての取得時効に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■Bは,甲土地が自己の所有する物であると過失なく信じ,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を開始したものの,それから10年が経過する前に当該占有が隠匿のものとなった場合には,当該占有の開始から10年間占有を継続しても,甲土地の所有権を時効によって取得することはできない。
〇 自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を10年間占有した者は、占有開始の時に善意でかつ過失がなければ所有権を取得することができる(民162.2)
平穏に、かつ、公然と他人の物を10年間占有した者が、時効期間満了前に占有が隠匿になれば時効取得できない。
■Bは,甲土地がAの所有する物であることを知りながら,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を始め,その4年後,甲土地がBの所有する物であると過失なく信じたCに対して甲土地を売却した。この場合において, Cは,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を始め,それから6年が経過したときには甲土地の所有権を時効により取得することができる。
× 甲土地はAの所有する物なので、Cが甲土地はBの所有する物であると過失なく信じた場合、Bが悪意で占有を開始しているのでCは10年の取得時効を援用することはできない。(民187.2)
■Bは,甲土地を無権利者Cから賃借した場合には,甲土地の賃借権を時効によって取得することはできない。
× Bは,甲土地を無権利者Cから賃借した場合でも,甲土地の賃借権を時効によって取得することはできる。
時効取得できるものとして「所有権の取得時効」(民162)と所有権以外の財産権で「地役権、地上権、永小作権、賃借権、無体財産権」(民163)がある。
時効取得できるもの
所有権、地役権、地上権、永小作権、賃借権、使用借権、無体財産権
■所有権を取得時効するためには、所有の意思をもって物を占有(自主占有)しなければいけない。
■所有権以外の財産権を取得時効するためには、自己の為に占有する意思を持って占有すればよい。
■賃借権の土地時効取得の要件は①と②です
①土地の継続的な用益という外形的事実が存在して②それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは,土地賃借権の時効取得が可能である。(最判昭和43.10.8)
■Bは,甲土地が自己の所有する物であると過失なく信じ,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を開始し,その3年後,甲土地がAの所有する物であることを知っているCに対して甲土地を売却した。この場合において, Cは,所有の意思をもって,平穏に,かつ.公然と甲土地の占有を始め,それから7年が経過したときには,甲土地の所有権を時効によって取得することができる。
〇 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。(民187.1)
一番初めに占有者となったBが善意無過失であれば、後に占有者となったCが悪意、有過失の場合でもBは3年と7年を足した10年間で時効取得を援用することができる。(最判昭和53.3.6)
■占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。(民187.1)
■前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。(民187.2)
■Bは,甲土地を無権利者Cから買い受け,甲土地が自己の所有する物であると過失なく信じ,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を開始したものの,それから10年が経過する前に甲土地がAの所有する物であることを知った場合には,当該占有の開始から10年間占有を継続しても,甲土地の所有権を時効によって取得することはできない。
× Bは,甲土地を無権利者Cから買い受け,甲土地が自己の所有する物であると過失なく信じ,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と甲土地の占有を開始した場合、Bは占有の開始時に善意にして無過失であれば、10年が経過する前に甲土地がAの所有する物であることを知った場合でも,10年間占有を継続していれば,悪意や有過失でも時効が10年から20年になるわけではない。(最判明治44.4.20)
Bは途中でAの所有物であると知っても(悪意になった)時効により甲土地の所有権を取得できる。
2013年(平成25年)民法
問題 遺言について,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■遺言者が口がきけない者である場合には,公正証書遺言を利用することはできない。
× 遺言者が口がきけない者や耳が聞こえない者である場合でも、公正証書遺言を利用することができる。
口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳(手話・読唇・口話等)により申述し、又は自書し口授に代えなければならない。(民969.2)
口がきけない者とは生まれた時から口がきけない者、脳梗塞になり口がきけなくなった者、病気になり気管に穴を開けたことにより口がきけない状態になった者のこと。
■自筆証書遺言の作成日付を「平成31年1月吉日」と記載した遺言も有効である。
× 自筆証書遺言の作成日付を単に「平成31年1月吉日」と記載した遺言は日付の吉日と記載された部分が確定していないので有効にすることができない。(最判昭52.11.29、最判昭54.5.31)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(民968.1)
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。(民968.2)
自筆証書遺言書が有効になる場合
①カーボン紙で作成したもの(最判平5.10.19)
②氏名としてペンネーム・通称・芸名を記載した(大判大4.7.3)
③他人の添え手により補助を受けたが、他人の意思を干渉(介入)せずに作成したもの(最判昭62.10.8)
④自筆証書遺言書の内容の一部を訂正した場合に、その訂正方式が法定の要件を満たしていない場合(最判昭56.12.18)
自筆証書遺言書が無効になる場合
①ワープロで作成したもの(無効になる理由:手書きでないため)
②盲人点字器で作成したもの(無効になる理由:手書きでないため)
■自筆証書遺言については,印章に代えて,指頭に朱肉を付けて押捺することができる。
○ 自筆証書遺言については、印章に代えて,指頭に朱肉を付けて押捺することができる。(最判平1.2.16)
■指印(しいん)とは手の指先に朱肉をつけ、印鑑の代わりに押すもの。
■親指の場合は拇印 (ぼいん) という。
押印で許されるもの
①実印 ②認印 ③指頭に朱肉を付けて押捺(指印)
押印で許されないもの
花印(最判平28.6.3)、(司法書士過去問令和1年問22)
■AとBが同一の紙面にそれぞれの遺言と日付を記載した場合において,その紙面にAが署名押印をし,Bが署名押印をしていないときは,A単独の遺言として有効となる。
× AとBが同一の紙面にそれぞれの遺言と日付を記載した場合において,その紙面にAが署名押印をし、Bが署名押印をしても有効な遺言にはならない。遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない(民975)。
AとBが同一の紙面を使用して共同遺言することは無効である(最判昭56.9.11)。遺言は必ず単独でしなければいけない。
■未成年者であっても,15歳に達していれば,法定代理人の同意がなくとも,有効な遺言をすることができる。
○ 15歳に達した者は、遺言をすることができる。(民961)
15歳に達した未成年者は単独で有効に遺言をすることができ、この場合法定代理人の同意を得る必要はない。(民961、民962)
尚、未成年者は遺言執行者になることができない。
原則として未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。(民5)
■死因贈与の場合、15歳に達していても法定代理人の同意を得なければいけない。「死因贈与」とは、贈与者の死亡により効力を生じる生前の贈与契約のこと。(民5)
法定代理人の同意を要しない
■15歳に達した未成年者は単独で有効に遺言をすることができ、この場合法定代理人の同意を得る必要はない。(民961、民962)
■未成年者が認知をするには,その法定代理人の同意を要しない。(民780条)
未成年者の法定代理人となれるもの
■親権者(民818)
■離婚に際しては、協議等で定められた父母の一方(民819)
■親権者を欠く場合は未成年後見人(民838.1)
2019年(令和元年)民法
問題 詐欺又は脅迫による意思表示に関して判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■Aが、Bの詐欺により、Bからその所有する土地を買い受け、BからAへの所有権の移転の登記がされた後、Aが、Bに欺罔されていることを知らないまま、当該土地にCを抵当権者とする抵当権を設定し、その登記がされた場合において、Cが当該抵当権の設定時にBによる詐欺の事実について善意かつ無過失であったときは、Aは、詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消すことができない。
× 詐欺による意思表示は取り消すことができる。(民96.1)
詐欺による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(民96.3)
Aが、Bの詐欺により、Bからその所有する土地を買い受け、BからAへの所有権の移転の登記がされた後、Aが、Bに欺罔されていることを知らないまま、土地にCを抵当権者とする抵当権を設定し、その登記がされた場合、Cが抵当権設定時にBによる詐欺の事実を知らなかったときでもAは詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消すことができる。
■AはAB間の売買の意思表示を取り消すことはできるがCに対して抵当権設定登記の抹消を請求をすることはできない。
■AがBに欺罔された結果、法律行為の要素に錯誤を生じて意思表示をした場合には、Aは、詐欺による意思表示の取り消しを主張することはできるが、錯誤による意思表示の取消しを主張することはできない。
× ■意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。(民95.1)
① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
■前項第二号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。(民95.2)
■錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。(民95.3)
① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
■ 第1項の規定による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。(民95.4)
■AがBに欺罔された結果、法律行為の要素に錯誤が生じて意思表示をした場合は、Aは錯誤による意思表示の取消し(旧民法では無効)を主張することができる。(大判大正5.7.5)
■AのBに対する意思表示が第三者Cの強迫によりされた場合には、Bがその事実を知らないときであっても、Aは、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
〇 Bがその事実を知らないときであっても、Aは、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。(民96.2)
■詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96.1)
■詐欺について
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
■脅迫について
脅迫については詐欺のような規定がないので、「相手方がその事実を知り」、又は「知ることができた」に関係なく意思表示は、取り消すことができる。(民96.3反対解釈)
■Aの代理人Bが相手方Cを欺罔して、Cが所有する土地をAに売り渡す旨の売買契約を締結させた場合には、AがBによる詐欺の真実について善意かつ無過失であっても,Cは、詐欺を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
〇 AがBによる詐欺の真実について知らないときであっても、Cは、詐欺を理由としてその意思表示を取り消すことができる。(大判明治39.3.31)
■詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民96.1)
■意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(民101.1 )
■相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。(民101.2)
■AがBの強迫によりその所有する土地をBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた場合において、その後、BがCに当該土地を転売した後に、Aが強迫を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消したときは、Aは、Bへの所有権の移転の登記を抹消しない限り、Cに対して所有権を主張することができない。
× Cに当該土地を転売した後にAが脅迫を理由としてAB間の売買の意思を取り消したときは、AはCに対して所有権を主張することができる。(大判昭和4.2.20)
2015年(平成27年)民法
問題 成年後見,保佐又は補助に関し正誤を答えて下さい。
■本人以外の者の請求により後見開始,保佐開始又は補助開始の審判をする場合には,いずれの場合も本人の同意がなければならない。
× 補助開始の審判は本人の同意が必要です。(民15.2)後見開始,保佐開始は本人の同意が必要ない。
■成年後見人は財産に関する法律行為一般について代理権を有し保佐人及び補助人は家庭裁判所の審判により付与された特定の法律行為について代理権を有する。
〇 成年後見人は財産に関する法律行為一般について代理権を有する。(民859.1)
保佐人及び補助人は家庭裁判所の審判により付与された特定の法律行為について代理権を付与する審判ができる。(民876.4.1)
■被保佐人が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは,その行為を取り消すことができない。
〇 制限行為能力者(被保佐人)が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。(民21)
■成年被後見人は,意思能力のある状態で日常生活に関する法律行為をした場合であっても,その法律行為を取り消すことができる。
× 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消せない。(民9)
法律行為を取り消すことができないものとしては日用品の購入、光熱費の支払いがこれにあたる。「しかし意思能力のある状態で日常生活に関する法律行為をした場合,その法律行為を取り消すことができない。」
■成年被後見人が事理を弁識する能力を欠く状況にないこととなった場合には,後見開始の審判は直ちに失効し成年被後見人は行為能力を回復する。
× 後見開始の審判の原因が消滅したら家庭裁判所が後見開始の審判を取消す。後見開始の審判は直ちに後見開始の審判が消滅しても、成年被後見人が行為能力を回復するものではない。(民10)
2014年(平成26年)民法
問題 不動産質に関し正誤を答えて下さい。
■質権者は、質権設定者の承諾を得なければ、質権の目的である不動産について転質をすることができない。
× 質権者は、質権設定者の承諾を得なくても「転質」することができる 。(民348)
■質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。(民348)
■質権は、金銭以外の物の引渡請求権を被担保債権として、設定することができる。
〇 質権は、金銭以外の物の引渡請求権を被担保債権として、設定することができる。
① 質権は、「金銭債権」を目的として設定することができる。
② 質権は、金銭以外の債権で「特定物の給付」と「一定の行為を目的とする」ものに対しても設定することができる。
■質権者は、質権設定者の承諾を得なければ、質権の目的である不動産の使用及び収益をすることができない。
× 「質権者」は、質権設定者の承諾がなければ使用・収益することができない。(民350)
しかし、「不動産質(不動産質権)」については質権設定者の承諾を得なくても不動産の「使用・収益」をすることができる。(民356、民359)
■質権者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまでは、質権の目的である不動産の全部についてその権利を行使することができる。
〇 質権の目的である不動産の全部についてその権利を行使することができる。(民350、民296)
■同一の不動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、登記の前後による。
〇 同一の不動産について数個の質権を設定することはできる。(登記研究123.39)
同一の不動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、登記の前後による。(法4.1)
2008年(平成20年)民法
問題 遺言に関し判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■遺言は要式行為であるから、遺言の解釈に当たっては、遺言者の真意を探求すべきではなく、遺言書の文言のみを形式的に判断しなければならない。
× 遺言の解釈は、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。(最判昭和58.3.18)
■負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
〇 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。(民102.1)
■未成年者に対して最後に親権を行う者であって管理権を有するものは、遺言で、未成年後見人を指定することができる。
〇未成年者に対して最後に親権を行う者であって管理権を有するものは、遺言で、未成年後見人を指定することができる。(民839.1)
■被相続人は、遺言で、共同相続人中の一人又は数人の相続分のみを定めることはできない。
× 被相続人は、遺言で、共同相続人中の一人又は数人の相続分のみを定めることはできる。(民902.1)
■遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定することができる。
〇 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。(民1006.1)
2015年(平成27年)民法
問題 次の記述は、無効な法律行為と取り消すことができる法律行為に関するものである。これらの記述のうち、「この法律行為」が取り消すことができる法律行為のみを指しているものの正誤を答えて下さい。
■この法律行為により金銭債務を負担した債務者がその金銭の支払をした後であっても、債務者は、支払った金銭の返還を請求することができる。
※金銭債務があり、取り消し権を有するものは、追認をすれば、その後に支払った金銭の返還を請求できる。(民125)
※金銭を支払った場合でも返還を請求することができる。(民703)
よって取り消すことができる行為のみを指しているわけではない。
■この法律行為は、だれでもその効力がない旨を主張することができる。
無効な法律行為は、誰からでも誰に対しても無効を主張することをでき、このようなことを「絶対的無効」という。
よって取り消すことができる行為のみを指しているわけではない。
■成年被後見人がした法律行為は、原則としてこの法律行為である。
成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他の、日常生活に関する行為を除き、取り消すことができる(民9)よって取り消すことができる法律行為のことで、無効な行為のことではない。
■この法律行為は、その効力がない旨の主張をした時から将来に向かってのみ、効力を失う。
無効な法律行為は、当初から効力がないので、主張した時から将来に向かって効力を失うものではない。(民121)
よって取り消すことができる行為のみを指しているわけではない。
■この法律行為は、行為の後一定の期間が経過することにより、確定的に有効となる場合がある。
取り消すことができる法律行為のことで、無効な行為のことではない。
■行為の後でも、取消権者が期間内に取消権を行使しなければ有効となるので、取り消すことができる(民126)
■行為の後でも、「無効な法律行為は、有効になることはない。」
よって取り消すことができる行為のみを指している。
2008年(平成20年)民法
問題 A、B及びCが甲建物の持分を3分の1ずつ共有している場合に関し、判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。
■A、B及びCがEに対して甲建物を賃貸した場合において、Eが賃料を長期にわたって支払わないときは、Aは、単独でEとの賃貸借契約を解除することができる。
× 賃貸借契約の解除は管理行為にあたる。(大判大10.7.18)
共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用・収益をすることができる。この協議は共有物の管理に関するから、持分の過半数で決するとされている。(民252)
よって Aは持ち分が3分の1しかないので単独で賃貸借契約を解除することはできない。
■AがB及びCの了解を得ることなくGに対して甲建物を賃貸している場合には、B及びCは、Gに対し、直ちに甲建物の明渡しを請求することができる。
× AがB及びCの了解を得ることなくGに対して甲建物を賃貸している場合に、B及びCは、Gに対し、共有物の明け渡しは当然にはできるものではない。(最判昭和63.5.20)
■AがB及びCの了解を得ることなく単独で甲建物を占有している場合には、B及びCは、Aに対し、直ちに甲建物の明渡しを請求することができる。
× 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。(民249)
■共有者の1人が単独で共有物を占有している場合でも、他の共有者は、当然には共有物の引渡し、若しくは明渡しを請求することはできない。 (最判昭和41.5.19)
■共有者の1人の持分価格が過半数を超える場合でも他の共有者に対して共有物の引渡し、若しくは明渡しを請求することはできない。ただし何かしらの決定事項があればできる。
■Dが甲建物を権限なく占有している場合には、Aは、Dに対し、単独で甲建物の明渡しを請求することができる。
〇 Dが甲建物を権限なく占有している場合、Aは、D(不法占拠者)に対し、単独で甲建物の明渡しを請求することができる。(民252、大判大10.7.18)
■Aは、Fに対する債務を担保するため、甲建物の自己の持分について抵当権を設定することができる。
〇 Aは抵当権を設定することができる。 各共有者はいつでもその持分について譲渡したり、売買したり、抵当権を設定したり自由に処分することができる。
2005年(平成17年)民法
過去問民法ランダム問題はここまでです。
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